「直営維持」を図りたい公務員司書はもてる人脈を活かせ〜最近の「健康情報サービス」ブームから

事業仕分け行財政改革などの逆風の中で、公立図書館では様々なサービスを行い、“生き残り”を図っています。
様々なサービスが生まれてくることは市民にとっても大いに歓迎。新たな試みが互いを刺激し合って発展していくことが期待されますが、残念ながら、その中には先達の“猿真似”に終わってしまっている場合も多いようです。
一口に“猿真似”といっても、事業のCMSなどを十分理解し、実践してくれればよいのですが、案外名前や体裁にこだわり、事の本質をついていないものを多く見受けられます。

ここでは、その代表として「健康情報コーナー」をとりあげてみます。
で、2年前のことですが、とある団体の中堅司書向け講習会に参加しました。
その講習では事前課題が多く出されて大変でありましたが、そのうちある講義で
健康情報サービスについて論述したある文献の中に記載されている健康情報のレファレンスブックリスト(約30)の自館での所蔵状況を調べよ、というものでした*1
その時、ちょうどいいタイミングで、公民館を巡回健康相談とかで、かつて市役所で一緒に働いていた保健所の保健師さんと栄養士さんが私の公民館を巡回してきました。かつては初々しかった彼女たちもいまや大ベテラン。貫禄充分です。
お互いの業務の合間で、司書室にご案内。コーヒーを片手に旧交を温めたのち、健康指導のプロフェッショナルに件のリストを
見せて意見をうかがうことにしました。
案の定、というべきか、かなり手厳しい指摘・意見が続出してきました。
一つ目は掲載されていた文献の出版年が実に古いこと(前世紀末の本が半分近くを占めていましたから)
「この医学事典、ピロリ菌のことなんて書いてないんじゃないの…」
重粒子線治療などもないかもね」
「まぁ、ソビエト連邦の書いてある世界地図みたいなものよ」
ということで、
「あんたたち図書館員は、本を見せることだけが仕事なんだから、それでもいいんかもしれないけど、読んだ方に本当に役立てるために選んでもらわなきゃ、百害あって一利なしよ!」
とまで“ダメ出し”されてしまいました。
もっとも、彼女らの不満は別の場所にありました。件のリストはNDC490〜499が掲載されていたのですが、
「これって病気になってしまった人が読む本ばかりですね」
「私たちとしては、病気、特に生活習慣病にならないよう健康づくりをすることが大切だと思っている。それが市民にも行政にも(医療費削減ということで)よい結果をもたらすから…。“健康”について語るなら健康の三大要素「栄養・休養・運動」について決定的に不足していますね…」

やはり専門家、というかその道のプロにいろいろ意見をきくことは大切だなぁと感じました。いろいろな職種が集まる市役所では、そこでの人脈を活用しやすい環境でもあり、また、今回の場合は健康づくり〜医療費削減など、行政に資する関与、市民サービス向上を図る中で図書館の立場・意義をアピールできるというものです。

で、件の課題ですが、なんとか(いやいや)提出しましたが、当日この調査結果についての議論でもあれば、上記のような保健師さんたちとの意見交換を申し述べようと思ったのですが、実際の講義ではほとんどふれませんでした*2。そんなこんなでもとより期待はしておりませんでしたが、講義自体、自分の感想としては
「金(受講料+交通費+手間賃)返せレベル」
ではありましたなぁ…*3

*1:あとで書きますがあまりにバカくさい課題でしたので詳細忘れました

*2:自分の少なくない経験では、現役職員対象の講習・講義ともなると“事前課題”に名を借りて自己の好奇心を満たそうとしたり、自分の研究のネタにしようとする手あいが少なくありませんでした

*3:ちなみに、この講習会は毎年開催されているのですが、自分の次の年、つまり昨年より講師が交代しております。自分としては残念ですが、「自浄作用」が働いたことはいいことです