二元論でこれからの図書館を語れるのか?  〜遅ればせながら『みんなの図書館8月号』を読んで〜

さるトイレの会話

「ブログ? キミはそれをやっているのかね? ああいう手合いには悪口や勝手なことばかり書くヤツばかりで困ったもんなんだけどね…」

前回に続き、トイレのネタですみませんが、さる7月4日、群馬の名湯草津温泉の“中沢ヴィレッジ”のお手洗いで、ある方がおっしゃったセリフです。そう、「図書館問題研究会・群馬大会」の会場で…

時刻を少し前に戻します。車で会場入りして、まずはトイレに入ったところ、ご年配の紳士が先客として小便器に向かっておりました。首から下げたタグから、参加者同士とわかり、
「どうも、こんにちは」
と会釈して隣の便器に立ちましたところ、ニコリともせず上から目線で
「どこの人です?」
この場合、自分から先に名乗りを上げるのが一般社会のマナーだと思いますが*1、私も図書館界には長くおりますし、相応の如才なさも身についておりましたので、昔図書館に勤めていたこと、いまは市役所で働いていることを話しますと、
「今日はまた、どうしていらっしゃったんで?」
コトバの裏には
“部外者がなぜ来たんだ?”
というニュアンスがあったので
「未練があるんでしょうかね、自分もまだまだ図書館ブログもやってんですよ…」
自嘲的に答えたところが、冒頭のセリフ。
彼は一足早く便器の前を離れ、手を洗いながら、捨てゼリフのように言い残していきました。

このご仁にとり、自分が現役でないことを知ってしまえばただの通りすがり、いや、路傍の石にも及ばない存在(邪魔な石ころ)であったにちがいありません。
しかし、残念なことに“なんでも決めつける人間”は、図書館界には少なくない、今回に限らずこれまでもこのような方にはずいぶんお会いしています。図書館員は仕事柄からか、ラベリングが大好きなのです。
問題は自分の思い込みで勝手に決め付ける体質。今回も
“ブロガーは図書館の敵!”
と決めつけられてしまいました。自分のエントリの、いや不徳のいたすところ、他の図書館ブロガーのみなさん、すいません…(って、ところでなんであのオヤジ我が正体を見抜いたか? 図問研会員(じゃないかもしれないけど)恐るべし!
で、ラベリング自体は、かまわんけど、そのやり方が単純というか、
会員か非会員か?
司書か行政職か?
なんでもかんでも二元論で語り、敵と味方に分類するように思えます。
昔、マレー侵攻作戦で
「イエスかノーか?」
と机をたたいた将軍がおりましてけど、単純に敵と味方にわけ、ラベリングするのがならわしなのでしょうか?
ブログ云々についても、はじめから「よからぬ奴等の所業」と決めつける始末です(そういえば、図書館界の初期の“情報リテラシー支援”って、とにかく、インターネットのダメ出しからスタートしてましたっけ…)

『みんなの図書館』8月号を読む

なんで、いまごろ約1か月前のハナシを蒸し返したといえば、先週土曜、ようやく『みんなの図書館』8月号を読むことができたからです。
これについて方々で語り尽くされたようですので(代表的な記述として、

・みんなの図書館 400号おめでとうございます! 読書ノートのつもり?なつれづれ日記(2010-07-22)
 http://d.hatena.ne.jp/yoshim32/20100722/1279793586

をあげておきます)、自分だけが感じたことを申し述べます。
Twitterやブログ、ブクマコメで話題になった中沢委員長の意見、私は好感をもって迎えました。
私は中沢委員長に対しては、“同じく図書館を愛する者”として認めあい、

・「大輪一輪」から「百花繚乱」へ、明日は図問研大会
 http://d.hatena.ne.jp/hatekupo/20100703/1278169009

そのご、自分で少し失礼めいたことを書いて

・私が見た図問研大会
 http://d.hatena.ne.jp/hatekupo/20100705/1278332547

委員長にコメントで遺憾の意が表され

図問研の中沢委員長よりコメントいただきました
 http://d.hatena.ne.jp/hatekupo/20100710/1278773290

で、謝罪と、対話の継続のよびかけをしました。
やっていることのレベルはお世辞にも高いとはいえません。
が、ソーシャルメディアの双方向性を中沢委員長が実際にしてみせたことの意義は大きいと思います。私は図問研でのTwitter活用を進言しました。これについて返事はいただけなかったのですが、その後ご自身でTwitterのアカウントを設けた意義は大きいと思いました。同時に、あの原稿はおそらく、これら一連の出来事の前に書かれたのでしょう。そのあたりが悔やまれてなりません。

ロマンス、イラネ

今号で好感をもったのは、図問研の会員数の推移(減少)ぶりが率直に表されているところです。
が、記述を見るとやはり残念な部分は多いです。
ある革新政党が選挙のたび、候補者を擁立し、惨敗します。
が、
「我々の主張は正しかった。だが、国(市)民がそう判断しなかったのだ」
と、自らの運動の妥当性を強調してやまないことがあります。これはある意味、
「自分たちの主張を聴かない国(市)民がバカだった」
と語るに等しく、また、一方で
「党員・機関誌読者を増やそう!」
と全党員に檄をとばす、そんなイメージが図問研とダブるのです。

中沢委員長は「『みんなの図書館』400号に寄せて」を、次のとおりしめくくります。

最後にみなさんに二つお願いです。
・まったく知らない県内の図書館員とお友だちになり情報を交換しよう。
・『みんなの図書館』へ寄稿しよう。
※みなさまのご協力をお願いします。

最後の「みなさまのご協力をお願いします」というのが、鉄道の“携帯電話はマナーモードに設定のうえ、通話はお控えください。”を連想させるものがありますが、自分はこの“お願い”実に不満です。
“図書館員とお友だち”
だけでなく、
“図書館員以外の地域の人と広く交友をひろめましょう”
と思うし、後者の寄稿についてですが、前にも書きましたが、
『みんなの図書館』には投稿の案内・要領が記載されていないのです。まず、そこをはじめてみてはいかがでしょうか?
そのような
「みなさまのご協力をお願いします*2。」
で、直面する会員減少などに対峙できるとおもっておられるのか、そんな「ロマンス、イラネ

それでも図問研は永久に不滅です

とはいえ、図問研はしばらく安泰。というより、図問研にご利益を求める人はいますから
かつて

・日本図書館【教】会が“免罪符”の販売を開始するのか!? <認定司書制度の開始にあたって>
 http://d.hatena.ne.jp/hatekupo/20100718/1279390071

認定司書には「講師経験」がものを言いますが、図問研にはいってくれば、おのずと講師にも選ばれやすくなる、極端なハナシ“図問研会員のつどい”でも開催し、各々の“状況報告”で、お互い講師を務めあったことにすれば、ハッピーでしょうね。
でも、本当の研修とはそんな甘いものではありません。前回紹介した
日本図書館協会中堅職員ステップアップ研修(2)で講義−「図書館のウェブ活用−理論編」
課題に苦闘している受講生も大変なんだけど、Twitterで「#jlastepup」のハッシュタグをみると講師@argも全力投球だ。
「ブログ、Twitter程度のことができない人間が、情報の専門職を名乗るはさすがにまずいですよ。」
と檄をとばす一方で愛情豊かにフォローを続けている。
これからの“情報の専門職”としての司書、図問研からなかなか見えてこないのは実に残念なことです。

*1:世間の一般常識は、図書館員の非常識。これがお約束

*2:案外、その前に“ブログ・Twitterはマナーモードに設定のうえ、書きこみはお控えください。”と言いたかったのではなかろうか?