司書はホラを吹き、司書教諭は矛盾を言う。それでいいのだ!

しばらく前のはなしです。
某中学校が、よせばいいのに「朝の読書運動」をはじめまして、これまたよせばいいのに、担任教師(司書教諭)が、持参した本を「いい本」「悪い本」に「認定」することまではじめました。
この初日に当たり、ニキビ面の男子中学生が、私のところに、
「(自分で)読んで面白く、(先生に)認められるような本を」
という、ご要望とも相談ともつかないセリフが持ち込まれました。
私は3〜5分くらいの雑談ののち、

  • ユニークなものを求めている
  • 多少皮肉っぽい面がある
  • 旅行や探検が好きなようだ

ということを「聴取」したうえで、

  • 短い時間で読める
  • 読みやすい文章

ことから、この本

ショート・トリップ

ショート・トリップ

を満を持して、おすすめいたしました。

数日たって、件の生徒がやってきて、
「この本、ダメでした…」
といいます。
きけば、その教師いわく、

  • くだらない
  • 短い

とおっしゃったとのこと。
そういう「ご判断」をされては、こちらも面子丸つぶれ状態です。
「そりゃぁ、いくらなんでも…」
そもそも朝の読書は、
・朝の読書ホームページ
 http://www1.e-hon.ne.jp/content/asadoku_tebiki.html
にもあるように、

  • 毎日やる
  • みんなでやる
  • 好きな本でよい
  • ただ読むだけ

というルールがあったはずです。
マジギレ寸前の私を、30歳年下の彼がとりなしました。
「この本、おもしろかったよ。だから、もういいよ。」
教員の評価がどうであろうと、“読み手”が満足すればそれでいいのです。
しかし、あの日あのとき、自分自身の取るに足らないメンツにこだわり、頭に血が上ったこと、そして、それを30歳下に慰められたことは、恥ずかしい記憶です。
現役司書の方々も、不条理なことはあるでしょうが、月日がたてばいずれ懐かしく思いだされることもありましょう。

ちなみに、後日談。
この本の著者「森絵都」さんが

風に舞いあがるビニールシート

風に舞いあがるビニールシート

で、直木賞を受賞されました。

さっそく、例の生徒に

ショート・トリップ

ショート・トリップ

を、再び持って行かせると、果せるかな、今度はその教師、大きくクラス全員に見せるように
「この本を書いた人は、“直木賞”という大変立派な本を書いた人です。みなさんも、このような“立派な本”を選んで読んでくださいね!」
先生、超認定。
まぁ、裏付けを伴わない認定にはリスクが伴いますね。>日本図書館協会認定司書事業委員会各位

蛇足

理論社が倒産したことで、「ショートトリップ」「カラフル」といった名作も入手困難になるのでしょうか…
さびしいことです。