当世図書館事情〜トーサツ、ケーサツ、ケーソツ〜

取材拒否図書館

お昼休みにtwitterブラウジングしていたら、とある公共図書館を取材しようとしたら、
H市立図書館は、撮影NG。利用者のプライバシー保護が理由。その理由は当然なんだが、利用者は写さない、撮影した写真はみせる、と言っても、頑なに拒否は残念。
という書き込みがあり、しばらく考え込んでしまいました。
提灯記事を書いてもらおうということで、卑屈になるのも困ったことですが、たいていの場合、好意的な態度を示すのが当然だと思っておりましたから…
帰宅して、さっそく同市の図書館公式HPを拝見すると、“おねがい”と標する次なる記載項目あり。

おねがい 
住所、氏名、電話番号等がかわったときは図書館までお知らせください。
図書貸出券は次のとき、お返しください。
   市内に居住の方で市外に転出されるとき
   市外の方で市内に通勤・通学をされなくなったとき
みなさんが利用される大切な本です。
   ひどく汚したり破損したり、また、紛失されたときは、現品等でお返しいただくことがあります。館内での飲食、携帯電話のご使用・カメラ等による無断撮影はご遠慮ください。

この記載項目と、現場の反応にはかなりのギャップありますね。
まず、あくまで“おねがい”とは、願望・要望事項であって絶対的な禁止を訴えているワケではありません。ところが現場では“頑なに拒否”しているという。う〜ん、このギャップの差とうものは“ニュアンスの差”では埋められませんね。
次に“無断撮影はご遠慮ください”というセリフですが、こういうコトを言い出すと、
「じゃぁ、“断り”を入れれば、OKなんですか?」
というハナシにもなります。
実は、あとから、同市の図書館設置条例と「H市立図書館の設置および管理に関する条例施行規則」を丹念に調べてみました。同規則では、
館長は、この規則または係員の指示に従わない者に対して、図書館資料(以下「資料」という。)および施設の利用を停止することができる。
としかめっ面の文言がありましたが、前述の“おねがい”に相当する記述は見当たりませんでした。
ここまで書くと、現役の図書館員からは、
「それは、トーゼンのマナーだろ! 守って当然だろ!!」
という声も聞こえてきそうです。
実際、マナーとルールの峻別は難しいものであります。
先日、ある図書館に行きましたら、
「施設内での飲食は固くお断りします」
と書いてある一方で、「施設内」に「食堂」がありました。この施設の「食堂」はテイクアウト専門なのでしょうか? 弁当持参の図書館員は、喫煙者よろしく施設の外で弁当を使うのでしょうか? 少々気になるところです。

なぜ、写真撮影は禁止されるか?

マナーとルールの間で、手詰まり感がでてきたので、話題をかえてみることにします。
そもそも、写真撮影はなぜ禁じられているかといえば、基本的には2つの盗撮のおそれがあるからです。
一つは、“デジタル万引き”ともよばれるように、資料そのものを“盗撮”してしまうこと。いわゆる著作権法違反です。
もう一つは、閲覧席で、閲覧机の反対側から女性のスカートの中身を撮るような行為、いわゆる破廉恥行為です(図書館を利用するような高度な知性をもった人間にあるまじき行為ですが、一流大学の教授であってもやる人はやるのです)。
ハナシを最初に戻せば、
「利用者のプライバシー保護が理由」
を理由とする取材拒否。これは少々厳しいのではないでしょうか?
図書館でイベントを開催して、行事の模様を写真に収めて、掲示したり「図書館通信」で紹介する事例もあります。
法的にはグレーゾーンではありますが、「プライバシー保護」を目的とした取材拒否は(マスコミは一応、国民の“知る権利”に寄与することを予定していますから)、図書館が守り育ててきた“知る権利”の保障に間接的に接するおそれがあります。

それにしても「芸がない」

だんだん、煮詰まってきましたが、少し今度の対応は「芸がない」としか思えません。
写真が必要ならば、かわりに職員が撮影すればよいと。いまはデジカメですから撮影した画像をその場で確認することもできると。少なくとも私は指紋がなくなるくらい揉み手して記事を書いてもらえるようにします。とにかく露出は重要ですから…
まぁ、「安政の大獄」で知識人を弾圧した人物の出身地であればこその役人根性。ひこちゃんの泣き顔が目に浮かぶようです。
だからといって、昨今安易に被害届を出してケイソツにも警察に逮捕させる図書館が現れる世の中であり、日本図書館協会もそれを「黙認」している世の中ですからご注意くださいまし。