図書館界の“暗黙の妥協”が“総務省の「転戦」”で丸潰れ?

ギョーカイは「指定管理者」だけNGでOK?

前回のエントリは、OJTの活用として、あまりにも
「当たり前のこと」
を書いたので、正直あまり面白くありませんでした。
ここからが本題と思ってください。

日本図書館協会の見解・意見・要望
 http://www.jla.or.jp/demand/tabid/78/Default.aspx

とか、業界名(迷)門研究会の機関誌

 http://tomonken-weekly.seesaa.net/

をウォッチし続けて、同時に

・官製ワーキングプアってなに?(2009-10-19)
 http://d.hatena.ne.jp/hatekupo/20091019/1256039354
・非正規職員を踏み台にして“委託ハンターイ!!”を叫ぶのはやめろよな(2009-10-22)
 http://d.hatena.ne.jp/hatekupo/20091022/1256217764

等々のエントリをあげ、今更ながらに気がついたことです。
それは、職員問題について
業界が一貫して反対し続けていることは指定管理者制度だけ
ということなのです。
まぁ、専門職集団とは現役職員で構成されているから、
本領安堵
さえあれば大丈夫、ということでしょうか。

  • 非正規職員の痛ましい現状>雇用の改善>労働組合に入ってがんばる、または“図書館界に限ったハナシじゃないから、泣き寝入りしてね〜
  • 窓口(部分)民間委託>館体(「国体」のようなもの)は護持されたぞ。朕は選書だけしているぞ。汝委託職員、客あしらい、お願いよ〜

というような「本音」が透けて見えるような気がします。
もはや、選書こそが最後の絶対阻止線。逆にいえば、天守閣さえOKなら、

非正規職員も部分民間委託も(望ましくないが)まぁ、妥協できる

という流れ、というか
“暗黙の了解(妥協)”
になりつつあるように見えます。
今回は、(部分)民間委託についてですが…

上から総務省

総務省内閣府公共サービス改革推進室が、

地方公共団体の適正な請負(委託)事業推進のための手引き
 http://www5.cao.go.jp/koukyo/chihou/ukeoi.pdf

“事業推進”とは勇ましい、なんと前向きな…って、思いましたが最初から出鼻くじかれましたねぇ。
冒頭の「現状及び問題点の所在」には、

現在、多くの地方公共団体で民間委託が進められていますが、この民間委託に関し、いわゆる「偽装請負」であると都道府県労働局から指導を受ける例が見られます。
(中略)
地方公共団体が、このような労働者派遣法に抵触する違法行為を行い、都道府県労働局から指導を受けることとなる理由の一つとして、労働者派遣法等の理解が十分ではないことが考えられます。

いきなりのダメ出しですね。
各地方自体の職員削減を法制化*1までして各地方自治体に強要した総務省ですが、その結果として民間委託が進む中で「偽装請負」の多発が
顕在化してきたわけですね。
しかし、公共サービス改革推進にまい進している総務省にもメンツがありますから、“教育的指導”するのが、今回の指導の所以でしょう。

これは、本気なのか! JOKEなのか…

それでも、「手引き」では、
地方公共団体の適切な管理下における窓口業務の効率的な実施方法の紹介」
を懇切丁寧に説明してくださいました。

  • 委託にあたっては、まず、公務員が行うべき業務と、民間委託が可能な業務に分けます。民間委託が可能な業務とは、受付、引渡し、端末操作、交付決定等の判断材料の収集など、事実上の行為または補助的な業務です。
  • その上で、民間委託が可能な業務の中から、実際に民間委託を行う業務を設定します。
  • 職員と民間事業者が混在しないよう、レイアウト変更を行います。その際、効率的な動線にも配慮することが重要です。

さらに、フロー(レイアウト)まで紹介してくれてます*2
せっかく、市町村の現場を知らない総務省の高級官僚がおつくりいただいたのですが、このレイアウト(フロー)、かなり無理がある感じです。
市役所窓口の最前線住民係に倣え、戸籍・住民票等の証明交付窓口でやってみましょう。

  1. 受付・申請書類の形式的確認(民間業者)
  2. 証明書の作成(民間業者)
  3. 交付決定の判断(公務員)
  4. 証明のお渡し(交付)と手数料の徴収(民間業務)

う〜ん、今の自分なら3番目の「交付決定の判断」だけやるのですが、このフローを“職員と民間事業者が混在しないよう”にやることは、かなり難しいでしょう、というよりも、はっきり言えば、
無理です!
普通の人がごく普通に来て申請して受けとって金払った帰る、という単純な流れであれば、それでいいけどイレギュラーな事態になると困ります。申請の不備(委任状や疎明資料等)とか、申請の内容とかで「不受理・不交付」になれば「3」が「1」または「2」の窓口に出向いて、説明したりする必要が出るとなると“職員と民間事業者が混在しない”わけにはいかなくなるし、「1」または「2」の間違いを指摘して、やり直しを指示するのは「指揮命令」とみなされるから「偽装請負」になってしまいますね。
かなり「無理」な内容です。
加えれば、OJTもできませんね…

これは「撤退」ではない「転戦」なのだ

このような、かなり無理がある内容を出してくるというのはなぜでしょうか?
この文書では、地方公共団体の民間委託の問題点をあげていますが、「戦果」についてはまったく言及されていません。
これは、私の勘繰りですが…
総務省としても民間委託問題アリアリであることは、もう認めざるをえない状態になっているのです。
ただし、一度出した方針を「撤回」するには「メンツ」とかあるワケで…
これは、事実上の「敗北宣言」といってもいいのでしょう。大日本帝国大本営陸海軍部が「撤退」を「転戦」といったように…
で、民間委託が無理となると、図書館界

  • 直営か指定管理者か

の二者択一になりますが。

*1:簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律(=行政改革推進法)第五十五条

*2:本文ではP10ですが、PDFではP12となる