資料を“マネジメント”することが“OPAC時代の図書館員のプロ倫理”

私は“分類”ができない

最近のエントリでMARCと件名の付与について言及しております。しからば “MARC”という新カテゴリを設置してみました。
新カテゴリを設けたからには、既存エントリでMARCに言及したエントリすべてにカテゴライズしなければなりません。これが少々面倒くさい、というよりも、ズバリ“憂鬱”なことです。過去の愚かなエントリを目にすることすら苦痛(身から出た錆びとはこのことか?)。ま、とりあえずこの件については“分類が苦手”ということにしておいてください。

MARCの

さて、OPACとかMARCについて、過去あれこれ考えてきました。そのために自らを袋小路に追いやってしまったようです。
ならば、一度基本に戻って、

  • 使いやすいOPAC
  • 検索しやすいOPAC

について考えてみましょう。
少し古い資料ですが、

・ OPACに、利用者と図書館員は何を求めるか?−OCLCが報告書を刊行*1
  http://current.ndl.go.jp/node/12684

所載の

・ Online Catalogs: What Users and Librarians Want
  http://www.oclc.org/reports/onlinecatalogs/default.htm

では、

  1. その資料がニーズに合っているかどうかを決定する際、エンドユーザーにとて最も重要なのはメタデータの要素となる。
  2. 適切な資料の特定を支援していくれるOPACがエンドユーザーに求められている。
  3. 業務を支援してくれるようなOPACが図書館員に求められている。

また、新しいところでは、

・ 図書館システムの現状に関するアンケート 調査結果(株式会社三菱総合研究所
  http://www.mri.co.jp/NEWS/press/2010/2021657_1395.html

がありますね。そもこの調査
日本図書館協会情報システム研究会の委託を受けて、全国の公共図書館、大学・短期大学附属図書館、専門図書館学校図書館を対象として、図書館システムの現状に関する横断的・総合的なアンケート調査を実施しました。
日本図書館協会には、このようなアンケートくらい自分でおやりなさいヨ…って云いたくもありますが、(おそらく少なくない)研究調査委託金を払って「委託」した成果が6年前のOCLC調査結果と似ているのは当然ともいえます。

ユーザー気取りで…

たいていの図書館員は、自分にとって(また利用者にとって)便利なOPACを求めようとします。これは当然のことです。
が、たいていの図書館員は、ベンダー様やMARC作成機関各位がガンガン売り込みをかけてくるからです。図書館員は“選び(選び方にもイロイロあるのですが、ここではスルー)”、そして“使う”だけです。選ぶことは、程度の差こそあれこれ考えるでしょうが、使うことに関しては、大多数の図書館員は問題意識ももたず、“フツーに使うだけ”の毎日でしょう。この時点で多くの図書館員はOPACについて“事実上の思考停止状態”に陥っているといってよいと思います。
「それで、いいのだ」
とか
「ほかにやるコトないじゃん!」
と、いってしまえばそれまでです。
ただ、自分のことを棚にあげていえば*2、図書館司書の多くが自らを“ユーザーの立場”に身をおきたがるような意識が強いような気がします。過剰なまでのユーザー意識。同時に、本来は検索する「手段」にすぎない「OPAC」を構築することを目指している、これは“手段の目的化”。感心できません。なぜならそれらはエンドユーザー=市民・利用者のためのものだからです。

知りながら害をなすな

同時に巨大化する書誌作成機関がつくるMARC、ベンダーが専門的技術をもってつくりあげるOPAC。このはざまにあって図書館員は一種“疎外”されているといってもいいでしょう。
ただし、専門職=プロフェッショナルとしてそのような態度でよいのか、といえば違うに決まっています。プロフェッショナルの倫理についてドラッカー(Peter F.Drucker)は次のように述べています

プロフェッショナルの責任は、すでに2500年前にギリシャの名医ヒポクラテスの誓いにはっきりと表現されている。
「知りながら害をなすな」である。プロたるものは、医者、弁護士、マネージャーのいずれであろうと、顧客に対して、必ず良い結果をもたらすと約束することはできない。
最善を尽くすことしかできない。しかし、知りながら害をなすことはしないと約束しなければならない。

エンドユーザーたる利用者にとって使用しにくいことを承知で、OPACやMARCを「提供」することは「知りながら害をなすな」の原則に反することです。一個人・一図書館員ではなかなか実現は困難かもしれませんが、「最善を尽くす」ことは怠ってはならないでしょう。

  1. 利用者目線でOPACを操作し
  2. MARCを「評価」し
  3. OPACとMARCとの関連性を理解しつつ自分なり「ビジョン」をつくる

くらいのことはできるでしょう。
そして、SNSで意見を交わしながら「改善」へと進めていく…
そんな、MARCとOPACを「マネジメント」することが、21世紀の司書の「資料組織化」であると同時に、職業人の努めといえるでしょう。

*1:カレントアウェアネスR(2009-4-23)

*2:棚にあげたら、ドリフのコントみたく金タライが頭上に落ちたぞ、イテテ…