名もない「学校司書」賛歌

遅咲きの桜前線が北上していきます。
おそらく、本日は小中学校の入学式が行われたことでしょう。
ちなんで、学校図書館に思いつくことを書いてみます。
実は、私が図書館関係の業務についたのは、行政職・教育委員会事務局のときのことです。
内容はといえば、各小中学校に従事している「臨時図書館職員」の方々の給与計算と支給などでした。
待遇はといえば、授業日に1日あたり4時間の勤務。時間単価は700円くらいだったと思います(内容がアバウトですみませんね…もう20年前のことですから…)。賃金は低いけど、学校長の「推薦」があれば、何年でも継続して勤めることができました。したがって、ベテランの方は10年近く雇用されていました。今でいう「雇い止め」はなかったのです。経済的に困っていなければ「生きがい」として学校図書館の仕事をできた時代なのです。牧歌的というか、そんな時代でした。

正規職員の待遇改善が「非正規雇用」の引き金になった。

そういえば、その時代、今でいう「非正規雇用」はほとんどなかったように思えます。いまでいう非常勤・臨時的任用が増えてくるのは、
「地方公務員の育児休業等に関する法律(平成三年十二月二十四日法律第百十号)」
が、施行されました。頃でしょう。
その条文に

育児休業に伴う任期付採用及び臨時的任用)
第六条  任命権者は、第二条第二項又は第三条第一項の規定による請求があった場合において、当該請求に係る期間について職員の配置換えその他の方法によって当該請求をした職員の業務を処理することが困難であると認めるときは、当該業務を処理するため、次の各号に掲げる任用のいずれかを行うものとする。この場合において、第二号に掲げる任用は、当該請求に係る期間について一年を超えて行うことができない。
一  当該請求に係る期間を任用の期間(以下この条及び第十八条において「任期」という。)の限度として行う任期を定めた採用
二  当該請求に係る期間を任期の限度として行う臨時的任用
2  任命権者は、前項の規定により任期を定めて職員を採用する場合には、当該職員にその任期を明示しなければならない。
3  任命権者は、第一項の規定により任期を定めて採用された職員の任期が第二条第二項又は第三条第一項の規定による請求に係る期間に満たない場合にあっては、当該期間の範囲内において、その任期を更新することができる。
4  第二項の規定は、前項の規定により任期を更新する場合について準用する。
5  任命権者は、第一項の規定により任期を定めて採用された職員を、任期を定めて採用した趣旨に反しない場合に限り、その任期中、他の職に任用することができる。
6  第一項の規定に基づき臨時的任用を行う場合には、地方公務員法第二十二条第二項 から第五項 までの規定は、適用しない。

という規定があり、あわせて、整合を図るために、関係法令(地方公務員法等)の改正・整備が行われました。
長い引用となりましたが、今日いう「非正規雇用」が、固定化・常用化にいたるには、正規公務員の「育児休業等」という福利厚生(もっとも少子化等を考えれば、社会的に有益な)施策が理由の一であったことは、皆様にもお考えいただければと思います。

「雇い止め」のはじまり

臨時的任用にかかる条件・法制の整備は、先述の学校図書館臨時職員制度にも大きな影響を与えました。
学校図書館職員をめぐる状況は、法整備の影響で“牧歌的”から“世知辛い”ものになります。そう、「雇い止め」がはじまったのです。継続しての「年間雇用」は、「学期雇用」へと代わりました。
私は(そのときはもう、司書になっていた)、その立場を思いやると、実に残念に思いました。
同時に、
「このような(学校図書館の)状況を放置しておくと、将来公共図書館界でも禍根を残すことになるのでは」
という“漠然とした不安”をもっていました。
しかしながら、学校図書館関係の「人」の問題は、公共図書館界では、他人事のようで、関心をもったり、同情する方は皆無に等しかったように思います。
そして、私は高等学校の「学校司書」となります。
勉強会などで、知り合った方に話題にしても
「アッチ(義務教育)は、所詮バイトのことですから関係ないわ」
とか
「あの人たちに力量がないから、“バイトで十分”という状況をうむのよ」
とかの反応ばかりだったことです。
たしかに、公共図書館・高等学校と義務教育では、求められる資質に差があることは事実です。しかし、両者は第三者的にみれば、同じような仕事をしているように見えることは明らかです。

実は重要な「小学校図書館

これ以上は、語るのも思い出すのもイヤなことばかりですので、省きましょう。
ただし、一人の高等学校司書&公共図書館司書として、現に子どもと向き合い続けた私にとっては、「小学校の図書館とかの中の人」って実に重要なのです。特に高等学校司書時代に感じたことですが、
「読書好きになるかは、小学校の図書館の“人”しだい」
ということです。
私が、学校図書館の雇い止めで胸が痛むのは、その従事者にとって、就労期間の制約上、新入学から卒業までの一部始終を見届けられないことです。

惜しみない声援を…

4月です。
今年も、たくさんの「非正規学校図書館員」が一斉に採用され、散っていくことでしょう。まるでサクラの花ビラのように…
でも、児童・生徒たちの中には「図書館の人」は、必ず生き続けることでしょう。
それを信じて…
「非正規学校図書館員、ガンバレ!」