“図書館の自由”が推進する“委託の自由”

4月1日づけ人事異動の発令で「図書館職員」の辞令をもらった方々、職場になじみましたでしょうか?
私が、皆様と同じように図書館勤務となったのは10年以上も前のことだったと思います。
職場研修や県内図書館協議会などの新人研修では、

図書館の自由に関する宣言
 http://www.jla.or.jp/library/gudeline/tabid/232/Default.aspx

について、わけても
“利用者の秘密を守る”
ことについて、耳にタコができるほど聴かされました。
一般行政職であった、私にとっては、ある種異常に、悪い言い方をすれば、
“どこぞの秘密結社にはいりこんでしまった”
ような感覚にとらわれました。
我々一般行政職の感覚からすれば、地方公務員法において

「職員は、職務上知りえた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする」(第34条1項)

と規定してされているのは常識中の常識。違反すれば刑事罰が課せられることになっているワケですから、守って当たり前なことです。
特に違和感を覚えたのは、地方公務員法に規定があるにもかかわらず、法令でもなければ拘束力もない「図書館の自由に関する宣言」を上位概念としたことです。まぁ“屋上屋”とはいうけど鉄筋コンクリの建屋にビニールシートをかぶせているようで、研修中眠気をこらえつつも苦笑せずにはおれませんでした。
なるほど、たしかに図書館の中の人にとって
“利用者の秘密を守る”
というのは、大原則にちがいないが、われわれ行政職からみれば、とくにセンシティブな(個人)情報を取り扱っているようには思えないのです。比べるのも愚かですが、徴税(個人の所得・資産とか)とか、国保の医療給付(病歴)、戸籍事務(犯歴・死亡事由)などにくらべたら、正直タカがしれたものです。

公共図書館の距離を急速に広げつつある、私の立場からみると、「地方公務員法第34条」と「図書館の自由に関する宣言」の二重構造は奇怪だと思いますし、また宣言の前文

図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。

と、あります。この文から読み取るかぎり、提供するのは
“資料と施設”
という物的サービスにすぎないのです。専門職としての図書館員の“人的サービス〜レファレンスなり読書案内”は、どうでもいいワケです。
いま、私が思っているのは、「図書館の自由に関する宣言」などの「自主規制」が、図書館の「独自性〜もちろん地方公共団体全部局からの〜」を醸しだしたような感じがします。
この「独自性」は、ハコモノ自体の独立とあいまって、地方公共団体全体から異質な存在になっていきます。
このような「異端」の施設が「民間委託」のヤリ玉にあがることも、ある意味しかたがないことだったのでしょう。
大胆なことをいえば、
公共図書館の独自性・自主性をうたう“自由に関する宣言”が、他部局と可分されやすいものとされ、民間委託を推進した」
と逆説的な説明もできるワケでして…