元気だった大阪の足跡を潰して、“元気な大阪をとりもどそう”とは変じゃないの?

前回に引き続き「政治」ネタになってしまいます。正直自分はこの方面にはあまり触れたくないし、自分としても面白くないネタですが…
大阪府中之島図書館の存続が話題のようです。特に個人的によくまとめてある、

中之島図書館廃止に関する自分用まとめ(藻類日記2012-06-21)
 http://morunta.hatenablog.jp/entry/2012/06/21/150916

を引用させてもらいます。
橋本市長と「大阪維新の会」。会の名称や、自らの政策を“船中八策”になぞらえ“維新八策などと称していることからわかるように、坂本龍馬をはじめとした幕末の維新の志士を意識し、自らを同一化しようとしているようにみえます。
私の個人的な坂本竜馬像は、

  • 亀山社中などの活動にみられるように「商才」に富んだ人物であり
  • 型破りのイメージが先行しているが、国際法にも通じたコンプライアンスを重んじた、
  • 近代日本第一の「実業家」のイメージ

であります。
さて、大阪府中之島図書館ですが、住友家が寄付したものです。
図書館を廃止することで、現在の住友グループがあれこれいいだす可能性はゼロなのでしょうが、寄付した住友家なり経過について熟慮すべきです。
幕末から明治にかけ、支配人広瀬宰平による別子銅山の近代化により住友家は大いに潤い、明治の富国強兵におおいに寄与したわけです。
別子銅山は、幕末戦争中、「官=新政府」に接収されそうになりますが、広瀬宰平は、
「銅山経営を経験のない者に任せると、利益なく国家の大損失となる」
と、談判し住友家「直営」を維持したわけです。
「直営」を維持されたことで、広瀬は大いに腕をふるい、外国人技術者の招へい、鉱山鉄道の建設など腕をふるい、生産量を飛躍的に増大させ(これには「鉱毒事件」などの問題が出ましたが)、西日本を代表する財閥の地位をしめます。
いわゆるノウハウとか知識経験の集積が住友家を救った、といえるかもしれません。
中之島図書館の寄贈は、広瀬が総支配人を退任したのち、15代住友吉左衛門住友銀行創始者)によるものですが、この一大壮挙には住友の財力と文化・教育への理解があったと考えます。それは単なる「美徳」だけではなく、近代資本主義は「教育」なくしては存在しえないことを会得していたと思います。

同時に、あの壮麗な建物

は、住友家の繁栄の象徴だけをあらわすものではありません。「近代化の象徴」であり、大阪が繁栄された証であり、健全な資本主義の発展の到達点でありました。
「元気な大阪を取り戻す」
と「大阪維新の会」の方々は公約し、アピールするのですが、「元気な大阪」の象徴としての「中之島図書館」をとりつぶしたり、その所以をかえりみることなく「転用」するというのは安易にもほどがある、という印象です。
あまつさえ、市長は

大阪市立海洋博物館「なにわの海の時空館
 http://www.jikukan-ogbc.jp/index.html

を廃止すると明言します。大阪に富をもたらし、首都たる“江戸”に対し“天下の台所”たる地位をもたらした「菱垣廻船」まで潰すというのは、いかがなものか、首をかしげざるをえません。

まぁ、これも大阪市民の「良識」ある方々の「首長選択」ですけど…