武雄市立図書館のTポイント付与はやはり問題である〜税収からTポイントへのすりかえ〜

Tポイント付与を考えてみる

Tポイントツールバースターバックス参入でいろいろ話題の武雄市立図書館。
当ブログにおいても、いろいろネタにさせていただきましたが、今回はいよいよ核心である
「Tポイントの付与」
に、ついて考えてみましょう。
これまでは「個人情報保護」の見地からの議論は多かったようですが、ポイント付与の是非については、あまり議論の対象にはなりませんでした。ただし、逆転して考えてみれば、T−カード会員とかTツールバーとは、ポイント付与を前提にしたうえでの議論なのですよね。

そもそもTポイントとは…

そもそも、「Tポイント」に代表されるポイントシステムは、とある商取引上での「消費者還元」のシステム。ただし、図書館の貸出は「商取引」とは違う、このあたりを押さえておく必要があります。
次に、Tポイント付与はCCC独自の判断・施策ではありません。
Tポイント付与は、提携当初の「9の市民価値」の一として、武雄市長との「合意事項」であると同時に、同市長の敷衍するところであるから、武雄市行政の一環であると解されます(まぁ、早い話が「コラボ」なんだよなぁ)。

市長ご発言「販売促進のようなもの」

さて、施策する市長さんの発言を

・「図書館で本を借りたらTポイント」TSUTAYAが公立図書館運営へ――Facebook市長「本の貸出履歴は個人情報ではない」(ガジェット通信)
 http://getnews.jp/archives/204806

には、以下のやりとりがあったようです。

記者:公立の図書館で本を借りたら換金性のあるポイントがつくというのは問題はないのか。
市長:前代未聞だと思います。が、1冊の本を借りたら100ポイントだったらまずいかもしれないが1ポイントならいいのでは。民間でいう販促費のようなものだと考えている。
記者:図書館法では無料で貸し出すことになっている。無料といえば無料だが、そこにポイントが付与されるということに問題はないのか。
市長:それは図書館法の枠内だと考えている。図書館で本を貸すのにお金を取ってはいけないが、渡すというのであれば問題ないし、そもそもポイントなのでお金ではない。図書館を利用しようという動機づけになればいい。

「販促費のようなもの」という表現を使っているので、「図書館利用=販売」と見立てているかのようです。
いかがなものでしょうか?

似て非なる経験

まぁ、このような「釣り」のような集客には私も実見したことがあります。
かつて、私は地域文庫に従事した際、地区の方々が、地域文庫の子ども利用が少ないことを嘆き、似たようなコトやっているのを見ました。利用カードとは別にスタンプカードをつくり、貸出し1冊につき1個、貸出した日の翌日から貸出期限日の間に返却するとスタンプ2個を押してもらい、一定数に達すると納涼祭・文化祭等の地区のお祭りの模擬店で「ヤキソバ」「綿菓子」などの「商品」と引き換えることができるものです。地域文庫も納涼祭も子どもが集まり喜ばれるということで、図書館員としては正直苦々しい思いもトーゼンありましたけど、その仕組みそのもので結果的に子どもの読書普及・社会参画につながれば、それはそれでいいじゃないか、と思っていたものです。

「販促のようなもの」から特定事業者への「販促そのもの」へ

図書館利用者に特典を付与する=オマケ=読書普及、という考えそのものは、少々筋違いの観もありますが、まだ許容範囲内です。
しかし、「特典」の中身が「Tポイント」であるとすれば問題アリアリです。
私は「Tポイント」は“企業内通貨”であって、当該事業者及び提携関係のある事業者にのみ流通するポイントであることを問題視します。付与が地域内通貨とか、公営施設の割引券とかであれば、「地域振興」「町おこし」の観点でかろうじて容認できるでしょう。また、来館困難な高齢者に交通系をチャージしたり、タクシー券相当を差し上げるのもいいかもしれません。
ただし、「Tポイント」は“企業内通貨”であって、当該事業者及び提携関係のある事業者にのみ流通するポイントであることが問題ですね。併設されるスタバ等はともかく、図書館本体そのものが「無料」であり*1ますから、貯めたポイントを使う場といえば、Tカード加盟店・業者くらいしかないですね。市長サンのおっしゃる
「販促のようなもの」
とは、ズバリ
「特定業者(Tポイント加盟・提携業者)への販促そのもの」
になってしまいます。

税金がTポイントに変わる瞬間

で、そのTポイントですが、先述のガジェット通信では、

記者:実際のお金の流れは?
市長:図書館の維持の部分に関しては運用費をCCCに渡す。雑誌文具販売に関しては図書館法の枠外のスペースを設けてそこでおこなう。賃料はCCCに払ってもらいつつそこで販売してもらう。

ようです。
良くも悪くも、公立図書館は「貸出し」が主要サービスです。
ここでは、

図書館の維持の部分に関しては運用費をCCCに渡す

と明確におっしゃっているようです。
ということは、「ポイント付与」の元手もCCCに渡すということでしょう。お金=税金で。
それでも、当の市長さんは
「経費を節減したうえ、付加価値(Tポイントの付与)までつけた」
だから、文句言うんじゃねぇ!
くらいの発言も想定できます。
ただし、市民の税金はTポイントに変わっていくのです。
これって、行政の「公平・平等の原則」にそっているかといえば、どう見てもそうはいえないですね。

*1:無論、図書館資料複写実費徴収金などで“お金をお支払いいただく”場面はあります。が、収入は、現金によるほか、証券または口座振替の方法により収納することが原則(地方自治法第231条、地方自治法施行令155,156条等)