“5年間だけ安心して働ける”といわれても〜労働契約法の「改正」と図書館司書〜

「労働契約法」改正と図書館員

すでにご存知の方も多いかもしれませんが、「労働契約法」が改正されました。

・労働契約法が改正されました〜有期労働契約の新しいルールができました〜(厚生労働省
 http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/

ちなみにこの法律。国家公務員と地方公務員には適用されません。ですから、専ら影響を受けるのは、指定管理者・委託・派遣の図書館員のみなさん、ということになります。

その内容は…

今回のポイントは、次の3つです。

1無期労働契約への転換

有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる。

2「雇止め法理」の法定化

最高裁判例で確立した「雇止め法理」が、そのままの内容で法律に規定されました。一定の場合には、使用者による雇止めが認められないことになる。

3不合理な労働条件の禁止

有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることを禁止する。

評価にとまどう内容ですね。特に、

1無期労働契約への転換

5年間パート・派遣を続ければ、「正社員」になれるというものです。このお膳立ては理想的かもしれませんが、逆に「5年未満」だけの「有期雇用」が増加するだけのハナシかもしれません。
ただし、

2「雇止め法理」の法定化

では、評価できる部分もあります。
また、

3不合理な労働条件の禁止

では、賃金や労働時間等の狭義の労働条件だけでなく、労働契約の内容となっている災害補償、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生など、労働者に対する一切の待遇が含まれるとあります。
「教育訓練」における差別(相違)の撤廃は、研修・スキルの向上につながる面で有意義なことだと思います。

司書の専門性の蓄積

ここで改めて考えたいのは、「司書の専門性の蓄積」です。
従来、臨時・非常勤などの「官製ワーキングプア図書館員」が増加することによって(公務員は試験採用の原則があるから、長期間の連続雇用は制限されている)個々の専門性の蓄積が失われかねない、という問題がありました。その点地方公務員法等の規制を受けない「指定管理者」等では、継続した長期間の雇用が期待できたワケです。
ただし、今回の改正で「5年未満」の有期雇用は増えますね。確実に。そもそも地方公共団体から「指定」されなければ、雇用そのものがなくなってしまう、そんなリスクの高い状態で「正社員」を抱え込むのは(一部を除いて)考えにくいです。

事業者の不安定

そういうワケで、私は今回の「改正」。一部で評価できる部分は多いけど、理想に走りすぎ現場の実情にまったくマッチしていない、という印象をもちました。
同時に、改めて考えさせられたことがあります。
それは、民間委託・指定管理者について

事業者そのものが「不安定」

であるということです。
従来から、図書館司書の雇用問題は、個々の図書館員の「継続した生活の安定と専門性の向上の確立」がテーマでした。
だが、よく考えてみれば、

民間委託・指定管理制度そのものが事業者の立場を不安定にし、結果としてその構成員も不安定な立場に遇せしめている

と、いうことです。
このあたり、根っこから掘り下げないと、図書館員の労働問題は解決できないのではないか、そう思いました。