極端なハナシ、日本図書館協会が「倒産」しても、図書館流通センター(TRC)があればいいじゃないか。

あやまちは繰り返しますから…

以前、日本図書館協会の常務理事が、委託問題のゴタゴタを整理したといって胸をはったこと(2010年)は、

・図書館職員は死ななくてもよいが、いい加減なところで消えるべき
 http://d.hatena.ne.jp/hatekupo/20101229/1293628005

にも書いたとおりです。
しかし、映像事業はその後も尾を引いたらしいですね。
ここでまた、あの日あのとき、N常務理事の発言ややりとりを思い出します。

納品の遅れなどでご迷惑をおかけしたが、なんとか元に戻した

ご発言の言い回しとその表情からして、“迷惑をかけた”ことを詫びるより、自らが“建て直した”という、自信と自負が感じられました。私は民間企業の上級管理職の友人が多いし *1、それなりに民間の厳しさを側聞していますが、このような場合、

  • そもそもの発端である、管理体制の甘さを反省し
  • 納品の遅れ等でユーザー(図書館)及びエンドユーザー(利用者)に迷惑をかけたことを詫び
  • 再発防止を誓う

この中のたった一点でもN氏の思考の中にあれば、あのような傲岸不遜はありえなかったように思います。
こちらも酔っていますから、
「TRC(=図書館流通センター)のtool−iは断然便利です。協会は(納品)時間がかかりすぎますヨ」
と、からかい半分で茶々をいれてみました。
すると、
「あんなのダメです! 日図協(=日本図書館協会)の視聴覚資料でなければダメなのです」
と、傲岸不遜の見本市のようにおっしゃったワケです。
このエピソードは、前にも書いたけど、続きを…
「だって、tool−iは便利だし、迅速だし、請求・納品も迅速だし、お客様係によるサポート体制は万全だし、実用性も信頼もはるかに上ですよ!」
と、さらにツッコミをいれてみた。
ここで、女史が理路整然とした反論をしたり、あるいはTRCのサービス内容にあれこれ質問して来たなら天晴れな心映えであると称賛すらできたでしょうが、ご本人は異教徒の呪文を聴いた宣教師のような表情で、
「あんなのダメです! 日図協の視聴覚資料でなければダメなのです」
を、繰り返すのみ。こちらは酒に酔った勢い半分、女史の態度への憤り半分で、さればとばかり、
「日図協の映像事業部がTRCよりも優れている点を具体的にあげよ」
と、さらに押してみた。
なかなか要領をえず、
2〜3回詰め寄っても、答は
「あんなのダメです!」
の一点張りに終わりましたが、同じセリフでも、最後のほうでは傲岸不遜というよりも、“迫害を受けた殉教者”のような態度に変わっていました(それにしても、なぜ図書館オピニオン・リーダーの態度って“おやまの大将”か“被害者”のいずれかですね)。
と、同時にこのようなメンタリティでは、
「再び同様な事件は起きるのではないか」
という“具体的な不安”を感じていました。
反省と学習、この二つが決定的に欠けていたのです。
この予感は(残念ながら、見事に)的中したようです。

TRCはなぜ優等生なのか

さて、私が話題に出したTRCですが…
公立図書館員とTRCの関係にビミョーな雰囲気がでてきたのも確かのようです。
従来の主従関係、ユーザーとサプライヤーのような垂直方向の関係から、TRCが指定管理者に参入することによって、水平〜競争意識・ライバル関係のようなものが生じているためです。
先日も、知り合いの司書が
「TRCは独占しているからケシカラン」
という趣旨のことを述べてました。
“ケシカラン”の中身は“些細なミス〜バーコードラベルの位置まちがい〜で、それもきちんと対処してもらったのだから、それでヨシとすべきところでしょう。それがなぜ“独占の弊害”に発展するのか、わけがわかりませんね。ホント図書館員は…
まぁ、ここで全砲門開いて全力集中射撃を行い、木っ端司書(のカン違いとか傲慢とか)を木っ端微塵にしたところで、面白いわけでもないけど一応考えてみました。
たしかにTRCはMARCの分野で「独占・寡占」状態を生んでいます。
しかし、TRCは自分だけのルールを(競争を背景に)押し付けしているワケでないし、規格の一方的なゴリ押しをしているわけでもありません。さらにいえば、知的財産権の運用に対してもオープンであり(TRCデータ部ログの公開)、厳格ではない(各館独自書誌データ作成にTRCHDを使用しても黙認している。本当のことは知らないが)ことをみると、独占・寡占状態に胡座して、あるいはそれを濫用するそぶりはまったく見られないようです。

TRCあれば安泰です

私は以前、TRCの営業マンと話したことがあります。彼らすべて、おごらず*2、媚びず、自然体であって、その口調にはユーザー(図書館・員)を通じてエンドユーザー(利用者・市民)に奉仕する、という姿勢・自負・矜持がみてとれました。そのような意味で彼等は図書館員以上の“ライブラリアン”ともいえる存在であったとも思えます。
おまけに「図書館の学校」「図書館振興財団」など図書館界全体の向上にも寄与しているのには感心するしかないですね。

さて、ふたたび日図協。幹部が胸をはるのは構わないが、老舗の暖簾という圧倒的に優位な武器をもちながら稚拙なマネジメントでエラーばかりです。
先述の女史は、
「日図協は政府や自治体から補助金を受け取っていない、まったくの自主的な組織だ」
と、自慢します。なんだか政党補助金を受け取らず、専従職員給料未払い続きの革新政党に通ずるものがありますけど、ビミョーにちがいますね。
日図協には「施設会員」があります。公立図書館という「施設会員」の会費は地方公共団体=税金からまかなわれています*3。このあたりの自覚が十分でないと…少なくとも目の前の図書館・員のさらにむこうにあるエンド・ユーザーのことまで考えているTRCとは比較するのも愚かというものです。
まぁ、日図協の財政危機を心配する善良な図書館員のみなさん、あそこは立ち直ってもまた同じような失敗やりますし、TRCがあれば困らない感じだから、放置しておいたほうがいいのじゃありませんか?

*1:こう見えても経済学徒です。うぅ、あのとき都市銀行に就職しておけばよかったのかなぁ…

*2:あぁ、見計らいでコーヒーをゴチになったけど

*3:もちろん、頒布物はもらえるけど