「時刻表昭和史」を読む

増補版 時刻表昭和史 (角川文庫)

増補版 時刻表昭和史 (角川文庫)

昨日は終戦の日
1945年8月15日を描写する本は数多くあるが、もっとも印象的だったのが、この1冊。
初版は「昭和史」というよりも「戦前戦中記」ともいうべきもので、筆者が終戦の日米坂線今泉駅で迎えた場面で終わる。この著述こそ「圧巻」そのものであった。
初版が刊行されたとき、私は高校生の夏休み、県立図書館で借りて読んだ。暑さそのものがよい調味料となり、味わいを深めたと思う。
その夏から10余年が経ち、私は図書館に勤めることになった。辞令をもらったときは、宮脇俊三氏の「完全読破」をしてやろうとほくそ笑んだことはいうまでもない。
だが、勤務館には宮脇俊三氏の著作はほとんどなかった。書誌データーは残されているが、蔵書は「除籍済」になっていた。我が国屈指の鉄道文学が、急速に淘汰されてしまった理由はなぜかといえば、その多くがNDC「291」に分類されていたからと推理した。「291」といえば目につくのが旅行ガイド本や地図帳の類である。特に旅行ガイドは寿命が短く、量も多いので、おおむね5年で除籍されることを知った。
私はならばNDC「915〜紀行文学」に分類することが適切だったように思う。私は分類という作業が苦手であるから、書誌ユーテリティに文句をいえる立場ではない。また、「291」という分類をまた否定することもできないから、憮然とするだけなのである。
で、当の著者宮脇氏はどう思われるだろうか? 「915」に分類・配架され、尊敬する松尾芭蕉の「奥の細道」と同じ場所に並ぶことは好まなかったとも思うが…