なにも残してはならぬ 〜3月で図書館を去る方々へ

カレンダーがユーウツだった昨年

みなさま、カレンダーの取り替えはお済みでしょうか。
自分は、昨年の今ごろ、新しいカレンダーをみることすら、イヤでたまりませんでした…
あの頃は、まだ現役図書館員。紙一重と申しますが、3月31日と4月1日のあいだには、とてつもなく大きな壁が立ちはだかっているように思えました。
あれから、もう1年、いや、まだ1年。
で、今年3月で図書館を離れる方々。
晴れて定年退職を迎える方はまだしも、民間委託、指定管理者、そうそう非常勤の”雇い止め”で、あえなく図書館を離れられる方々の心中に思いをいたせば、心が痛みます。

なにも残してはならぬ

今月あたり、そのような境遇のとある方がTwitterでつぶやくのを拝見いたしました。
私のようないい加減なヤツと違い、
「3月末までに、自分に何ができるか、残せるか」
真剣に悩み、考え、行動に移そうとしていらっしゃいました。
素晴らしいことです。
でも、真面目な方と想像したゆえ、残酷なようですが「不良先輩」から、あえて、一言。
「なにも残してはならぬ」
と。

ヘビーロテーション!

おそらく、3月末までのあいだ、いろいろなことを考え、あれこれ考え、ガンガン行動を起こそうとしようと思われるでしょうが…行動しようとしても、本来業務に+αをこれから3か月組み入れるのはヘビーローテーション。かなり難しいと思います。
運動会のリレー競走で、バトンを次の走者に渡すことは、重要ですが一瞬の出来事ですが、次の走者として委託先や指定管理者受注者に、図書館業務を引き継ぐのは大変なことです。
1月は年始のお休みもあるし、2月は特に短いですから、想像以上に3月は早くやって来ます。
その結果として、あなたが計画したことのうち、半分はやり残してしまうことになります。
すると、
悔いが残ります。
図書館の現場を去っても、その「悔い」というものは、後々まで尾をひきます。
無責任で「不良司書」「匪図書館司書」を自称(自傷?)していた私ですら、堪えました…
私は、あなたには心残りなく、最後は笑顔でカウンターを離れていただきたい。あなたのために
では、どう臨むか、ということですが、あなたが去った後も、何事もなかったかのように、その次の日から図書館の扉が開き、利用者が来て、貸出したりしてゆく。そんなありふれた日常を損ねることなく、継続せしめることです。それこそが重要です。

継続は力なり、しかも容易ではない

「冷たい人だね…」
そう、思われるかもしれません。
しかし、サービスの継続こそ、利用者の方々にとって、もっとも重要なことなのです。
私は、10年以上も昔、そのことを痛感いたしました。
移動図書館の仕事をしておりました。
大小2台の移動図書館。そのうち「小」の1台がリストラされることになりました。
もちろん、それまで巡回していたサービスステーション(=SP)も見直しを行いました。「小」の受持ちSPのうち、ご利用の多い場所は「大」が巡回します。
しかし、よくあることですが
「大は小を兼ねる」
という一般論が適応されないこともあるのです。
「小」で利用の多いSPでひとつだけ、道路事情で「大」が巡回できないSPができてしまったのです。
いろいろ次善の策が検討されましたが、どうもうまくいかず、結局そのSPは泣く泣く廃止とあいなりました。
役目とはいえ、辛い経験でした。
当日、巡回すると真っ赤な目をしたおばあさんが立っていました。
聞けば、明日からはもう図書館の車が来なくなる、好きな本が自由に読めなくなる、それがあまりにも哀しくて、淋しくて、とうとう一晩中泣き明かしたとか…
その晩は、私も眠れない夜を過ごしたこと、自らの無力感、やりきれない思いに打ちのめされたことを、10年以上前のことを昨日のように思い出すことができます。

“何気ない日常”をつくる

おわかりでしょうか?
私は、マンネリズムのかたまりのような図書館の日常というものが、いかに尊く、そしてそれが破綻したときの悲しみの大きさを身をもって知りました。そして、それを維持することの意義を…
私はその経験をもって、図書館の日常をこわすことなく続ける…運営主体がかわり、その中の人たちが変わっていったとしても、いつもと同じようなカウンター風景が続くこと、それがわたしのミッションであった訳です。

悟ったつもりが…ご覧の有様だよ!

かくのとおり、すっかり「悟った」つもりでいた私ではありますが、それでも実際には事後になってから、後悔や煩悩のようなもので、心が骨折してしまったことは、先述

・「公の施設」である公共図書館の職員もまた「公の存在」であるのとおりです。
 http://d.hatena.ne.jp/hatekupo/20100926/1285506126

しかし、こればかりはいたしかたないことかもしれません。
まぁ、グチのようなことがあったりしても、
「話が違うんじゃね!」
と、哀しみを怒りにかえ、このエントリに書いていただければ、気分も紛れることでしょう。
こんな私が、偉そうなことを云うのもおかしいかと思いますが、願わくは、どうかご自分自身を尊重され、ご自愛くださることを…
どうぞ、よいお年を!