読者は編集者のにおいを嗅ぐ…

古い話で申し訳ありませんが、私の人生においてもっとも大きな存在は

花森安治

である。

我ながら信じられないことだが、小学4年生から中学2年まで私の愛読誌は「暮らしの手帖」であった。理由は特になかったが、たまたま読む本もなかったのでおばあさんが買っていた本を読ませてもらっていた。そのせいか変な消費者知識ばかり身についてしまい、親戚の家におじゃましてジュースをふるまってもらっても、
「このジュースは合成着色料がふんだんに使われている。暮らしの手帖○○号の記事にあった。だいたい果汁30%でこの鮮やかなオレンジ色はおかしいじゃないか」
などと言い出す始末である(いやなガキだなぁ)
私は暮しの手帖≒花森氏に対し、ある時は尊敬と同意を、ある時は反発と不快を覚えながら読み続けていた。
が、そんな暮しの手帖との付き合いも終わりの時が来た。
1978年1月、花森氏ご逝去。
直後の暮しの手帖には、死の前日まで表紙デザインについて部下に指示を与えていたという。
それからの暮しの手帖は面白くなくなった。
何がどうのではなく、一味足りないのだ。(ますます、いやなガキだなぁ)
すぐれた編集者というものの底力というものをローティーンの私はまじまじと見せつけられた気がする。