【他人事だから】都道府県立図書館の将来【なんとでもいえる】

先日のエントリにて
“市民全員が来館者・利用者と思いこみ、館の外側に目を向けなくなる”
問題を指摘しました。
自分のことを棚にあげて、云うのもなんですが、特に都道府県立図書館の方には注意してほしいと。

県立図書館ってホントに必要?

いつもお世話になっている*1岡本真(id:arg)氏の

・『図書館雑誌』2月号に「『デジタル時代の都立図書館像』を見据えて−都道府県立図書館の四つの選択肢試案」を寄稿
 http://d.hatena.ne.jp/arg/20100215/1266220493

と、寄稿された本文

・『図書館雑誌』2010年2月号(Vol.104 No.2)
 http://www.jla.or.jp/zasshi2010.html

を読んでなおさらその感を強くしました。
本文中で、岡本氏が“1.既存の知識・情報の流通を担う直接的サービスを行う都道府県立図書館”の一例としてあげたのが、個人貸出冊数で首位の岡山県立図書館 Okayama Prefectural Library
その個人登録者数は128,013人(H.20.3.31現在)を誇りますがが、奉仕人口全県民190万人の1%10%にも満たないことがわかります*2
もちろん、個人貸出は同県立図書館の機能のほんの一つにすぎないわけですが、反面、個人貸出をもって同県立図書館の存在意義を裏付けるのは、かなり苦しいと思います。

市立図書館との役割分担では

今回の岡本氏の記事では“執筆にあたっての予備調査”として、“都道府県立図書館の所在地と、都道府県庁の所在地と最高路線価地との距離”を算出し一覧にして掲載しています。これは大変面白いので、同じ手法(Yahoo!地図の経路検索)を用いて“当該県立図書館とその館所在の市町村におかれた市町村立図書館との距離”を測ってみました。全部の館を計算できればよかったのですが、あいにく手間と気力と時間にとぼしいため、測定したのはわずかですが、案外遠くない場所に市立図書館がある例は多かったです(たとえば、「図書館海援隊」の取り組みで有名なT県も、市立・県立ともあまりぱっとしない我がG県M市も900メートル程度の距離でした。前出の岡山では市立(本館)には2キロ以上の距離がありました。)
都道府県立図書館のほとんどは、県庁所在地に住所をおく場合が多く、その県庁所在地にはある程度の市立図書館が整備されています。
もちろん、私のようなプロフェッショナルからみれば、暗黙の棲み分け、すなわち郷土資料の収集範囲(全県かその都市のみか)とか、選書方針など役割やキャラクターの差を見出すことも、県立図書館ならではの意義を見出すことは承知の上ですが、「行政改革」という名の大鉈の前ではそのようなナイーブな議論は通用しないのが現実とういもの。うかうかしていると、「市町村との重複」の観点から「事業仕分け」でバッサリやられる危険は高いでしょう。

移動図書館の廃止が県立図書館の役割を見えにくくした

さて、前回のエントリで指摘した
「市民全員が来館者・利用者と思いこみ、館の外側に目を向けなくなる」
視野狭窄。私自身はずっと気が付いておりました。なぜならば私自身は移動図書館に勤務した経験があるからです。
戦後まもなく、高知・鹿児島・千葉などで走りはじめた移動図書館こそ“全県サービス”を目指した都道府県立図書館のすべてであったと思います。その後、市町村立図書館の多くが自前の図書館をもつようになって、移動図書館蒸気機関車さながらに“役割を終えた過去の遺物”であるような扱いを受けるようになります。
が、移動図書館にかわる効果的なアウトリーチサービスの決め手を持たない*3できたこと、それが都道府県立図書館の弱点だと思います

*1:まったくもってオンでもオフでも

*2:ここでは「個人登録者数」をあげましたが、実際に利用した登録者(=実登録者)はもっと少ない

*3:移動図書館こそ“見える”アウトリーチサービスの王様だと思います