「市民のためのサービス」を心がけるべき図書館司書は「市民目線」に立っているか。

差しさわりが大いにありますが、今回も図問研全国大会ネタです。
課題支援サービスがはやっているため、全体会企画は鼎談「まちづくり・観光・図書館」でありました。
自分なりに感想をいいますが、

○まちづくりが話題になっているが、観光は大きな経済効果をもたらす

○図書館は観光情報の発信元でもあり、図書館そのものが観光の対象となる

【結論】図書館はまちづくりに有効だ!

というシナリオというか導線がミエミエであり、パネラーも図書館の方だけがボルテージをあげてギャップを埋めるのに必死でしたし、
“図書館の存在価値を高めるか”
ということを強調(することによって図書館の“生き残り”を図るため)しようとしていた感があります。

それにしても、今回の鼎談。不思議と
“市民不在”
を感じてしまいます。
すなわち、
“市民はどのような情報やサービスを求めているか”
という市民目線の不在なのです。
やっかみ半分かもしれませんが、司書*1の中には“上から目線”であったり、“図書館・紙媒体への盲目的な愛”による視野狭窄を感じてしまうのです。
今回の場合、観光旅行をする人間の立場というものに思いをいたしていない。それでは、たいていの場合、自己満足に終わってしまいます。
また、
“行政内部で図書館の存在意義を再認識する”
というミッションも下手をすると逆効果。司書“自己満足”しているだけの取り組みを高く評価してもらおうということが無理ですし、そもそも、行政・観光協会などにアピールしていくだけの説得力に欠けるからです。



で、云いたい放題でしたが、
「そういうオマエはどうするつもりだ!」
と逆上する図問研会員、いや司書の方も多いと思いますので、私なりのコタエをひとつ。
それは統計などを使うことです。


内閣府大臣官房政府広報室による自由時間と観光に関する世論調査
 http://www8.cao.go.jp/survey/h15/h15-jiyujikan/index.html

というものがあります。
この世論調査は平成15年8月のもの、少し古い内容ですが、それこそがミソです。
ちなみに
「本報告書の内容を引用された場合,その掲載部分の写しを下記宛に御送付下さい。」
とありまして住所・電話・ファックスなぞあります。E-mailであれば、このエントリのURLをお送り申し上げたいところではありますが、残念ながらアドレスが書いてありません。なにぃ、印刷して送付しろってか?! まぁ、面倒ですのでこのままにしておきましょう。

で余白はさておき、肝心の中身をと見てみますと、

イ 国内旅行のための情報の入手方法
最近(この1年くらいの間),観光,レクリエーション,スポーツなどのための1泊以上の国内旅行に行ったとした者(1,142人)に,その旅行のための情報はどこから得たか聞いたところ,「家族,友人,知人等の紹介(口コミ)」を挙げた者の割合が44.8%と最も高く,以下,「旅行業者のポスター,パンフレット,案内書等」(35.8%),「旅行雑誌,ガイドブック等」(23.2%),「インターネット等の旅行情報」(15.1%),「新聞,一般雑誌」(14.5%)などの順となっている。(複数回答,上位5項目)
前回の調査結果と比較して見ると,「インターネット等の旅行情報」(3.5%→15.1%)を挙げた者の割合が上昇している。


とあります。
「旅行雑誌,ガイドブック等」(23.2%)と「新聞,一般雑誌」(14.5%)とをプラスすると37.7%!
すなわち、
図書館で取り扱う「活字媒体」が情報源の4割を占める。
したがって、図書館は観光情報取得に便利で大きな貢献を果たす

といえば、説得力が増し、行政内部での地位も高まるというものです。
えっ! なに? 無理があるだろうってか?!
お見込みのとおりです。ただし、ここで言いたいのは

テキトーな統計から自分たち(図書館)にとって、いかに都合の良いデータをよりぬいて実証性を増す、これが利口なやり方です。(もちろん、都合の悪いデータは黙殺しましょう)

まぁ、今回はとにかく民営化・指定管理者・事業仕分けから図書館を“守りたい”とお考えの方に、実証性(たとえでっち上げでも)をもって説得力ある図書館づくりのためにお話しいたしました。


少しふざけましたが、まじめに考えても、やはり「市民目線」というのは必要です。
たとえば、「課題支援」ということでは、研修仲間id:debarakingさんのいる鳥取県立図書館。ここの取組は(実際に行ってみたことがありませんが)やはり群を抜いています。「図書館海援隊」プロジェクトについても

・「労働者の直面する課題と図書館のできること」
 http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2010/01/05/1288525_1.pdf

を真剣に考えております。しかも、その担い手にはおそらく同年代であろう、若手司書を起用。こういった館内の雰囲気や組織としての底力はすごいでしょう。

「課題支援サービス」どうせやるなら、市民のニーズを調べ、徹底的にやってほしいと思います。が、「民間委託・指定管理者化」を目指すための戦術とか陽動作戦でやるならやめてしまったほうがいいかも。こうしたコトやらせれば、マーケティングとかコーポレートアイデンティティで場数を踏んだ“民間”の勝ちにきまっています。このような方面で今年の3月まで有名だった千葉県のY町立図書館の“公務員司書”だったって、かつては名門百貨店の従業員だったのですから…

*1:図問研会員がどうのこうの、とはいいません。数多くの図書館従事者の中のごく一部、千人程度にすぎない図書館員を相手にしても仕方ありません