某県立【もったいある】図書館! 

福島県矢祭町の「矢祭もったいない図書館」が話題になったことがありました。
私はまだ未探訪ですが、地方自治法(昭和二十二年四月十七日法律第六十七号)第二条にある
地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない”
究極の姿といえそうです。
しかしながら、かつての同業者諸氏、わけても研究会などを熱心になさっている“活動家司書*1”などのウケは必ずしもよくないようです。

さて、先日行った某都道府県立図書館。せっかくですので、1階の一般図書コーナーにも足を運びました。
最近流行の「課題支援コーナー」もありますが、たとえば「医療問題」についていえば、NDC490〜499プラス598をそっくり引き出してきたようなものです。例のツアーで行った「横浜市立中央図書館」では、各種パンフレットがおいてあり、配布されていて必ずしも“別置しただけ”にとどまらせない仕掛けが見受けられましたが、こちらは単なる書架の移動を行ったに過ぎない感じでした。

怪しい「文庫コーナー」

さて、エントランスから近い場所。目抜き通りに相当巣場所で「文庫コーナー」とあります。
このこと自体は、驚くには値しませんが、中層書架の手前二連ぶんぎっしり、

  • ブックコート加工されていない(カバーと本体は両面テープ(?)で固定)
  • 背ラベルが貼られていない
  • 「文庫本コーナー」を表示しておいて、新書本も置いてある(こちらもブックコート・背ラベル無し)
  • 表紙には同図書館のバーコードが貼ってある(図書館の資料だと外見上識別できるのはこの部分だけ)

“背ラベルがないことの違和感”よりも“ブッ○オフなどの新古書店に行った感じが強い

「寄贈本らしいが」

なんとなくピンとくるのが、あって奥付を見ると、
「K社(大手出版社名、すぐにバラさざるをえないが、ここでは一応伏せる)贈呈」
とあります。
そうなると、その図書の位置づけ・扱いが気になってしまう。そこで数冊手にとって館内OPACで調べてみました。ここの館内OPACって、ISBNコードからでの検索ができないので、少し疲れたけど、「蔵書請求票」として使われているらしいレシートのような紙にプリントアウトしたものをGETしました。
その内容をみると、

  • タイトル(ヨミ)
  • シリーズ名(叢書名のことか?)
  • 責任表示
  • 出版年
  • ページ数
  • 大きさ(cm)

副書名が記載されていないなど、一応目録として最低限度書誌的事項は入力されている、というより新刊全件MARCに資料付けしていることがわかりました*2
むしろ、次の所在情報で

  • 資料コード:(略)
  • 請求記号 : ///
  • 場所 : 文庫コー

所在場所で「文書コー」と表記してあるが、これは「文書コーナー」の略称4文字コードを採用しているのでしょう。こんなツマラヌ省略を、お客様が利用するOPACにおいて平気で行うSEを私なら叱りつけているところですし、それを放置する図書館員も、なぁ……

「寄贈本」だからといって

同時に、それらの本はその館に一冊だけしかない本であることもわかりました。もう一冊、複本があればあまり目くじらをたてることもないのですが、一冊だけしかない本ということになれば、扱い(分類・請求記号の付与)くらいはきちんとし、同時に保存性を考慮してできれば(手間もかかるし、ブッカー自体安くないですが)装備もきちんとやってほしいところです。
どうやら、この館は「寄贈本」というものは、無料だから粗末に扱っていい、という考えがあり、それが資料の取り扱いにまで影響していると考えざるをえません。
しかしながら、図書館にとって「寄贈本」というものは、篤志家からの気持ちとして、十分な敬意と感謝を表する対象であり(たとえ、その本が返品されたもので、裁断費用をかけるよりも図書館で引き取ってもらう方が経費節減になり、同時に税金対策にもなる、という計算が寄付者(=出版社)にあったとしても)、ぞんざいな扱いをしていいものではないと思います。特にその館にとってその本一冊だけだというならば、なおさらのことです。

「寄贈」だからといって、きちんと選定していることを主張したいのか?

「寄贈本」は、すべて「文庫コーナー」に“放置”されているのかといえば、必ずしもそうとはいえません。
同じ出版社の本で

がんを生きる (講談社現代新書)

がんを生きる (講談社現代新書)

は、前述の「課題支援コーナー>医療」にあり「講談社(あ、バレてしまいましたね…)贈」とあり、同じ「講談社現代新書」でも、
まだ、タバコですか? (講談社現代新書)

まだ、タバコですか? (講談社現代新書)

は、「文庫コーナー」に請求記号(ラベル)も付与されずに放置してある。この差はいったいなんでしょうか? おおかた館員の偉い人にヘビー・スモーカーでもいるのでしょうか? まぁ、訊ねたところで「煙にまかれる」のが関の山ですから。

選書をアピールしたいのはわかるが、“もったいぶり過ぎ”

結局のところ、
「司書は選定がもっとも大切な仕事」
というのがこの館のスタンスなのでしょう。同じ寄贈図書でも“司書様のお眼鏡”にかなった本は恭しく、「課題支援コーナー」という檜舞台に招じいれられれば、かたや、分類や請求記号という図書館業務の「基本中の基本」をも無視して放置することもあるのです。
もっとも、司書の楽しみは、市民の税金を使って、あれこれ通販(=TRC)ショッピングできる、ということに尽きるのでしょうか?
そういえば、以前このエントリでも紹介した調査相談室の女性。「週刊新刊全件案内」を熱心に読んでおりましたっけ。その司書様のお楽しみ…もとい、“最重要任務”である「購入資料選定」の邪魔をしたのでは、機嫌を損ねるのは当たり前でしたね。
まぁ、選書についてもったいぶりをするのはいいですが、いまどき学校図書館でも見られないような「背ラベルのない本」だけはやめましょう。図書館の名が泣きますから…

*1:少なくとも、私は“理論派司書”といわない

*2:同館がTRCの新刊全件MARCをお買い上げなのは、2階の女史が「週刊新刊全件案内」を熱心に見入っていたので、それとわかる