今日は防災の日 

図書館の危機管理

“図書館の危機管理”といえば、図書館問題研究会の近年のヒット作であると思います*1。実践的で図書館員の問題意識、日ごろの苦悩に応えるような研究・議論・発表は相応の評価が与えられなくてはなりません。
私も、

こんなときどうするの?―図書館での危機安全管理マニュアル作成の手引き

こんなときどうするの?―図書館での危機安全管理マニュアル作成の手引き

分館の「責任」ある立場としてこの本を買い求めました。
が、幸いにして「役に立たず」におわったのですが…
この本を送り出した方々からは不本意でありましょうが、この本は公共図書館の指定管理者・民間委託契約で重宝されております。図書館という「公の施設」の管理は適切でなければなりませんが、あらゆる「危機」というものを想定し対応策を練って仕様書に盛り込み、契約に明記するのは大変な作業ですが、
「図書館の危機管理はこの本を参照し、万全を期すこと」
で、すべてがOK。事務方としては大変楽なわけです。

“火災訓練”の思い出

今日はあの関東大震災があった日ということで「防災の日」。
何度か閉館日を活用して、「避難訓練」をやったおぼえがあります。
消防法(昭和二十三年七月二十四日法律第百八十六号)で

第八条  学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(これに準ずるものとして政令で定める大規模な小売店舗を含む。以下同じ。)、複合用途防火対象物(防火対象物で政令で定める二以上の用途に供されるものをいう。以下同じ。)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行なわせなければならない。

規定されているので、多くの図書館でやっていることではないでしょうか。
訓練は一応、地震が発生し、給湯室などの火気あるばしょから火事が発生した、という想定が多かったように思います。役割分担を決め、「市民=利用者役」の職員を誘導したりして行います。最後に指導に当たる消防署の職員の講評(以前は、社交辞令ばかり云っていたが、近年は「真剣さが足りない」「誘導役の職員の声が小さい」と、ちゃんと「指導」するようになった)をきいて
「訓練終わり!」
となって、一仕事終えてみな安心したような職場に戻るのですが、私としては
「それでいいのか?」
と考えてしまいます。
「むしろ、大変なのはこれからだ!」

本当の意味で「防災」とは?

図書館だけでなく、おおかたの施設における「訓練」とは、火災が発生した建物から利用者を避難させるということに重点がおかれますが、悪い言い方をすれば、
“施設から追い出す”
ことでもあります。
在職中、考えただけでゾッとするのですが、もし阪神淡路大震災クラスの地震が開館中(しかも日曜日)に生起したら、いったいどうするのだろうかと。
とりあえず、施設から避難=追い出しをかけますが、それから

  • 建物が無事であっても、地震の衝撃で、あるいは避難中の転倒によるケガをされた方
  • 子どもだけで来館した利用者をどう帰宅させるか
  • 今日のような35度以上の猛暑で、必要な飲料水、日陰など熱中症対策は

自治体のマニュアルには

当然、自治体でもマニュアルは用意されていると思いますが、案外図書館などで役立つ記述は少ないようです。
願わくば、図書館問題研究会の方々には、
地方自治体の防災体制にいかに図書館を組み込むか」
という方向を考えていただきたいと思います。特に、地方自治体が図書館を任せきり=切り離しを防ぐためにも。

*1:イヤミっぽいことを云わせてもらえば、“他に見るべきものがなかったから”とも思いますが