都立中央図書館を【観光】してきました

そうだ、都立中央図書館に行こう!

“忙中閑あり”とはいかないのが今の世の中です。したがって、“休めるときに休みを取ろう!”というのが、現在職場のお約束とあいなっています。
そこで、2月9日はお休みをとって、高速道路で「新三郷ららシティ」あたりに買い物を…と、考えていたのですが、あいにくの雪。
私のクルマは、タイヤサイズに適合するチェーンがないので、雪の日は擱座するしかありません…

と、いうわけで行先を「都立中央図書館」に変更しました。
実は、前にも書きましたが、

・地域と観光に関する情報サービス研究会(マレビトの会)発足
 http://d.hatena.ne.jp/yashimaru/20110111

に加入させていただいている以上、それなりの「研究」はしなければなりません。
実は、ずいぶん前のエントリ

・口では「ウエルカム」だが、他所者に冷たい図書館って結構多い(2010-7-12)
 http://d.hatena.ne.jp/hatekupo/20100716/1279284099

このエントリでは、タイトルがタイトルなだけに否定的な主張をしているようですが(それは、自分でも「失敗」だったと認める)、それでも
「観光資源としての図書館」
に着目しています。ただ、それらに目を向けない図書館/司書をなじっているだけ。
そこで、今回は仮定としての「観光資源としての図書館」。すなわち
“図書館を観光する”
ことが成立するかの実験であります。
そんなわけで

・東京都立中央図書館
 http://www.library.metro.tokyo.jp/12/index.html

を【観光】してみることにしました。
選択理由の一つは、なんといっても、NDLには「マレビトの会員兼初代L−1グランプリ優勝者」がいるからには敬遠>消去法。
理由の二つ目は、学生時代ずいぶんお世話になった「お気に入り」の存在でありながら、ここ数年、足を運んでいないこと。少なくとも改装後は行く機会がありませんでした。
ご無沙汰ですし、自分も現場を離れて専門職特有の「カン」「偏見」が消失しつつありますから、ここは、私人として参拝、じゃなくて一般人として訪問になります。あらゆる条件が整っているように思えました。

さて、ダブルデッカーグリーン車の二階席から眺める、高崎線にしてはめったに見られない高崎線の冬景色も一興であり、籠原のりかえで湘南新宿ラインで恵比寿へ*1。恵比寿から広尾までは東京メトロ日比谷線で一区間ですが、神谷町〜恵比寿までの日比谷線は急カーブばかりで、線路の摩擦音もまた懐かしい…

で、「広尾」下車。まぁ、この図書館というもの、立地自体が「有栖川宮記念公園」の中にあり、観光的にも恵まれていると思えるのですが、残念ながら、この日有栖川宮記念公園はドブ浚いの最中。しかしながら、通行する者一人一人に
「足元に気をつけてください」
と、礼儀正しく挨拶(注意)する作業服の人には、冷たい中での作業と併せて、頭がさがる思いです。

入館手続きは、以前よりも簡素化されましたが、基本的なルールそのものに変化はありませんでした。以前は「入館」というよりは「入管」のほうが近いイメージでしたが、職員の方との接点がかつてにくらべて少ないぶん、ストレスフリーです(もちろん、職員の対応も格段に向上しているのですが)。

企画展「新聞っておもしろい!」

館内にはいって、

・企画展「新聞っておもしろい!」
 http://www.library.metro.tokyo.jp/15/15174.html

この企画展は

・「東京都立中央図書館」のHP
 http://www.library.metro.tokyo.jp/12/index.html

には現示されなくて、より上位階層の

・「東京都立図書館」のHP
 http://www.library.metro.tokyo.jp/index.shtml

からでないと“お触れ”に接することができない仕組みです。そのため、直接「東京都立中央図書館」を検索してアクセスした人間には目に入らなかったわけです。この「お触れ」の方法は、個人的には疑問符をつけますが、とりあえず嬉しいサプライズ。さっそく4階の企画展示室に行ってみることにしました。
係員の女性の方のほか、見学者は私一人。パンフレット類をいただき、お約束の“アンケートのお願い”をされました。
最初のパネルでは「新聞少年の像」が有栖川宮記念公園にあることをはじめて知りました。プチ発見。
展示そのものは、時節柄
「ネット全盛の時代、新聞を見直そう!」
という、メッセージが色濃くありまして、展示の方も
“新聞の栄光”
が埋め尽くされた内容でした。
「とにかく新聞に関心をもってもらおう」
ということ自体、悪いことではありませんし、それをアピールすることも反対はしません。
が、他方
“信頼できるメディアとしての新聞”
として、新聞全体を持ちあげすぎではないか、とも思ってしまいます。
すなわち、

  • 過去の「新聞紙条例」等の“表現の自由”と弾圧の歴史
  • 行き過ぎ報道(例えば、「松本サリン事件」での、被害者であり第一通報者でもある河野義行氏を「犯人」であるかのように報道したこと)

などの「黒歴史」も伝えなければならないはずでしょう(もっとも、“表現の自由”については有害図書に関する「都条例」の問題があって、ナイーヴにならざるをえないのでしょうが)。都立中央図書館の司書が本当に
「新聞こそ信頼できる情報源である」
と主張してやまないならば、ご退勤のさい、駅のキヨスクで「東スポ」を買うことをオススメしておきます。
お土産にブックリストを渡されました。このブックリスト、私が作成するとしたら、ISBNなり資料番号をバーコード化して印刷に刷り込み、利用の便を図ると思います。また、“関心をもってもらう”“きっかけづくり”は大事ですけど、自動車でいえばファーストギアからいきなりオーバードライブギアをかませるようなもので、少しばかり無理があるような気がします。

MLA連携を考える

実は、昨年7月、

・図書館をネタに飲む会@横浜&横浜市内図書館的施設ツアーを開催します。
 http://d.hatena.ne.jp/arg/20100707/1278475955

で、

日本新聞博物館
 http://newspark.jp/newspark/index.html

を訪問したことがありました。今回の展示においても「協力」に名を連ねています。
どうせならば、「協力」いただいている「日本新聞博物館」への返礼として、同博物館の周知チラシを配布してもらったほうが利用者にとっても、喜ばれるでしょう。ついでに云えば、「日本新聞博物館」に一層の協力をもちかけ、同博物館の入館料割引券を配ることもいいでしょう。なんといっても、都立中央図書館の最寄り駅である「広尾」は東急東横線みなとみらい線で、日本新聞博物館の最寄り駅「日本大通り」までつながっています(列車の運行形態上、中目黒や日吉あたりで乗り換えが必要ですが)。
このような共同作戦=コラボレーションの積み重ねと実践がMLA連携の第一歩です。
せっかくですので、案内の女性に「新聞少年の像」のいわれとかについて質問させていただいたところ(どうせ、あとでネットで調べればわかると思ったのだが、念のため)、すでにこの種質問あるを想定していたらしく、素早いレスポンスで、とある文献のコピーを提示してもらえたことに感心しました。

カフェテリアは改善の余地あり

ここで、昼食時となり5Fカフェテリアへ。実はここに来る途中、スープストック・トウキョーなどもあり、寒い冬ゆえ東京ボルシチなどに食指を動かされたのですが、今回は「図書館グルメ」ということで、カフェテリアを利用します。
平日の昼間、天候不順なこともあって、お客さんは少ないけど、これを幸いに窓際に席をとれば、噂にたがわず、素晴らしい景色です。改めて、メニューを物色。ここはいわゆるカフェテリアスタイル(好みの主菜・副菜などをとって最後にお会計)ではなく、単なる食券によるセルフサービス方式です。メニューは学生さんを多分に意識したようでボリュームあるものが多いようです。とはいえ、アツアツな食事がいただけることはありがたいことです。
注文をつけるとすれば、社会教育施設である以上、割り箸を使い捨てするのは止めてもらいたいし、「健康・医療情報」に力を入れてる以上、各メニューにはアレルゲンを含んだ食品の表示や総カロリーを表示していただきたいと思います。
さらにいえば、風光明媚な環境を活かして、「食べる」だけの場所から脱却していただければありがたいと、コーヒーブレイクとしてのユース、すなわちカフェラテやエスプレッソなど飲み物の充実や、フィナンシェなど焼き菓子も用意し喫茶機能の強化を図ってもらうと、利益も上がるはずです。

意味不明、というより「百害あって…」なコーナー

1Fには

  • 「健康・医療情報コーナー」
  • 「ビジネス情報コーナー」

が大いに目立っておりました。
ずいぶん前に「不健康な健康情報コーナー」について、このブログでも批判しましたが、ここもまたNDC490〜499だけ寄せ集めた「健康・医療情報コーナー」というよりも、単なる「病気の情報コーナー」に終わっていました。このようないい加減な仕事ぶりは、他の図書館には真似してほしくない、と思います。
まぁ、「健康・医療情報コーナー」については、「健康」の二文字を削ればOKなのですが、それ以上に噴飯なのが「ビジネス情報コーナー」。
この「ビジネス情報コーナー」なるものの正体は、NDC673.0〜673.9(産業)を移動しただけ。ここの図書館員は「ビジネス」をどうとらえているのか、わかりませんが、一人の男が起業し、登記し、社員を雇い入れ、労務管理をし、税金の申告に至るまで、数えきれない、多くのハードルがあるのですが、ここにはそれらにお役立ちになるような資料がまったくありません。
次に、「ビジネスマン」と読書について。多くのビジネスマンは、どのようなときに本を読むのか? といえば、悩み挫けそうになりながら、先人の生きざまに学んだりヒントを得たりすることが大きいです。
そのことを考えれば、人生訓なり2問の歴史書・伝記などが人気を得ると思うでしょう。なまじ安直な「ビジネス情報コーナー」を設けることは、図書館にとりディスインフォメーション、逆効果になるということも…

そして、次の目的地

不満ぽい記述が多かったようですが、【観光旅行】的には満足した、というよりも無限のポテンシャルを感じました。この図書館に関する限り、条件は整っていますが、肝心なところで詰めが甘い、逆説的にいえば魅力を伸ばす要素がふんだんにあるということです。
都立中央図書館を見歩いているうち、「日比谷図書館」のことが思い出されました。田中稲城今沢慈海、といった名館長の時代にいち早く主題別展示という特色ある先進例を提示した日比谷図書館。現在は諸般の事情で“休館”が続いていますが、広尾からは東京メトロ日比谷線で日比谷に出て建物を眺め、そのあとは卒論でお世話になった航空協会/航空図書館に足を向けようか…そんなこと考えながら有栖川宮記念公園をあとにすると「東京タワー行き」都営バスとすれちがいました。
首都トーキョー、懐は深いです。

*1:本当は「特別快速が恵比寿に停車してくれればいいのですが