学校司書を離れて出会った「立派な司書教諭」
司書教諭なんて、ラララ…♪
今日は学校図書館ネタです。
私が高等学校で「学校司書」なる仕事(正確に云えば“学校図書館用の事務吏員”ですが)に従事していた経験は以前にも書いたとおりです。
その「学校司書」の間では、「司書教諭」に対する評価は著しくないものが多かったようです。
理由を突きつめれば、
「司書教諭の少なくない方々が、図書及び図書館についての理解がない」
ことであるようです。
そのような非難がましい見方をする「学校司書」が「理解十分」なのであるかは、さておき、司書教諭の講習カリキュラムをみると、
以上各2単位×5科目で計10単位です。
やれ「粗製乱造」とか「実践力不足」などいわれている「司書@図書館法」の、たった1/3にすぎないのですから、その実力たるやおしてしるべしです(当社比)。
知見・能力・実務において決定的に勝る(と、自分で思っている)学校司書が、司書教諭に“subject to”されなければならない、というのが矛盾とかを感じるのでしょう。
実際、
- 君臨すれども仕事(実務)せず
- 司書教諭元気で留守がいい
- 理想論・空論だけ述べたてる
などの陰口はずいぶん聞かされたものです。
私の職場での司書教諭は、人間的・人格的には素晴らしい方でしたし、教師としての指導力や熱意・学級経営なども優秀ではあったのですが、こと学校図書館のことになると…(以下略)
そんなこんなで、私も「司書教諭」については高くない評価をしていたのですが、皮肉にも「学校司書」から「公共」に戻ってから、とある「司書教諭」の先生*1に出会いました。
突然訪れた、一人の淑女
我が館に、淑女(と、いってよいふるまい)が来館し、
「折り入って相談したいことがありまして…」
と、唐突にかつ礼儀正しくお声をかけられました。
で、相談の中身ですが…
- 自分の学校(県立高等養護学校)にも「図書室」が開設される
- 自分は「司書教諭」を任じられ、「図書室」を運営することになった
- しかし、スタッフは私ひとりで切り盛りしなければならない(他校とちがって「学校司書」がいない)
- ついては、ノウハウとかをいろいろ教えてほしい
- 特に不安なのは「分類・整理」などである
と、まぁ、いったところ。
質問のコトよりも気になるのは、その先生
“どうして、よりによって、オレのところに相談しにきたのか?”
ということですね。
これについて、とある学校司書の方から、
「あの方は、公共と学校、イロイロ知っているから頼りになりますわヨ。全国SLAからも執筆依頼がバンバン来る*2ようですし。よろしいんじゃございません?」
てなことをたらしこまれたよし。
私はその「仲介者」とはソリがあわない仲でしたから、
“うわぁ、まる投げじゃねぇか!”
と、心中で叫んでしまったワケですがね…
凛として
とにかく、詳しくお話しをお伺いさせていただくことになって…
いろいろ、事情をおきかせいただきました。
とりあえず、初年度予算は30万円とのこと。
頭の中でざっと計算すると、約200冊以内ということになりますね。
移動図書館(約5,000冊積載)
>
学校図書館(所蔵約32,000冊)
>
分館類似施設(所蔵約34,000冊)
のように、比較的少ない蔵書規模の勤務を続けてきた私からしても、図書館としての「基準」としては「文庫レベル」のものであり、思わず
「その程度なら、分類も整理も必要ないでしょうに…」
と言ってしまったワケです。
それに対して先生は、
「おっしゃることは、ごもっともですし、そうおっしゃる方も多いのですが…」
と、前置きしたうえで、
「私は、どんなに小規模であろうと、図書館というものはきちんと分類し、整理し、使うものであることを生徒に知ってもらいたいのです。だから分類して背ラベルを貼りたいのです。それを生徒に見せたいのです。」
凛とした答えが帰ってきました。
私は、
“文庫レベルだから…”
などと軽はずみな、小馬鹿にしたようなコトをいってしまった言動を恥じるとともに、お詫びをしました。
同時に、
“畜生! この先生の方が俺よりよほど図書館の本質を理解しているじゃないか!”
“この先生スゴい。本気(マジ)だ”
という、思いが錯綜しました。
私も、そうなれば全力投球するまでです(もちろん、これには「謝罪」の意味もあった)。
実用書重視で「意気投合」
資料収集方針を聴き取り、NDCは当面「第一区分(類)」まででよろしいでしょう、ということになりました。ただし、先生の専門が「家庭科」ということで、料理・手芸・美容などの生活科学の本については、
“この方面の実用書は充実させ、生徒に活用してもらいたいですね”
ということで“意気投合”し、NDC590〜599については三次区分(目)までとることにしました。
また、先生は生徒に親しまれるように、コミックも入れたいという話になり、それならばと
- 作者: くさか里樹
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(この「ヘルプマン」は、他の先生方に大変好評だったそうです)
反対に、先生が選書リストにいれていた
- 作者: もりきよし
- 出版社/メーカー: 日本図書館協会
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- メディア: 単行本
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「ワザワザ大金かける必要ないですヨ」
大きな声じゃいえませんが、三次区分表をコピーして渡してしまったりしましたし、ラベルキーパーとか背ラベル用紙などの装備用品も、予算がもったいないからという理由で、勝手に自分の館のモノを横流ししたりもしました*3。
それから…
いくつか基本的なことを説明したうえで、
「わからないことがあったら、遠慮なくいつでも電話くださいね」
と、結びましたが、その後“社交辞令”じゃなく、まったくもって“遠慮なく”お問い合わせの電話がしょっちゅう鳴っていましたっけ…
忙しいときは、正直辟易しがちになりそうなときもありました。
しかし、あの「出会い」の場を思い起こせば“喉元過ぎれば…”になりがちな自分にとって、
“図書館の原点とはなにか”
を再認識させていただける機会であったわけです。
実地訪問・手伝いをお願いされても、なかなか思うようになりませんでしたし、異動(=司書クビ)が目前になってからは、お別れの挨拶も「電話」で失礼してしまったことは、返す返すも残念です。
最後の電話では、おかげで図書室運営が順調で教職員・生徒・保護者ともに好評で、そうした評価から予算が増額される旨聞かされました。
同時に、惜別の思いとか、今までの親身なご協力について感謝を繰り返し繰り返し、述べておられました。
なぜでしょうか?
お礼を云うのはこちらの方なのに…
先生よ、巡り合えて最高だった… 司書最後の日々に…
まだいえなかった「ありがとう」をハイタッチで!