文学館条例を眺めて気がついたこと

ARGカフェ@筑波(2/13)の開催が近づいてきましたので、前回@横浜の模様を振り返るうち、
前回登壇者、文学館研究会の岡野裕行さん(id:literarymuseum)のことを思い出しました

・Literary Museum Studies
 http://d.hatena.ne.jp/literarymuseum/

一司書であると同時に、行政事務吏員でもある私としては、
“各文学館設置はいかなる根拠法令に基づき設置されているか”
ということにかる〜く興味があったので、これまたゆる〜く調べてみました。
とはいっても、
“文学館設置条例”
をググっただけなんですけどね。
(ちなみに、図書館以上に“指定管理者”導入例が大変多いことに目立ちました)
で、雑駁な結果から、「博物館法」に基づき設置した例が案外少ないことに驚きました。
まぁ、博物館の設置要件はぶっちゃけ他の社会教育施設(公民館・図書館など)に比べて大変厳しいですからね。なぜ厳しいかというと、私の解釈は
「悪用されるおそれ」
があるからだと思いました。
もし、“なんちゃって博物館”をでっちあげれば、税法上の優遇はもとより、ワシントン条約に抵触するようなペットを飼うこともできるし、銃刀法等のしばりにとらわれず軍事力(まぁ、骨董品の戦車がせいぜいか)を持つこともできるわけです。

で、少なかった博物館法とは裏腹に、案外に多かったのは「図書館法」を根拠にした例で、これも意外だったのですが、中でも私的に興味をひいたのがこちら

中山義秀記念文学館条例
 http://www.shirakawa.ne.jp/~reiki/reiki_honbun/ac50604651.html

ここでは、
第1条 地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条第1項及び図書館法(昭和25年法律第118号)第10条の規定に基づき、市民の教養の向上及び文化の振興を図るため、文学館を設置する。
とあるように、図書館法に基づき設置され
第4条 文学館において行う業務は、次のとおりとする。
(1) 中山義秀に関する資料(以下「資料」という。)を収集し、保管し、及び展示すること。
(2) 資料の調査研究並びに講習会及び研究会、企画展等の開催に関すること。
(3) 図書館法第3条に規定する図書館の業務に関すること。
(4) 前3号に掲げる業務のほか、その設置の目的を達成するために必要な業務に関すること。

図書館法にもとづく業務を行う立派な図書館でありながら、
第9条 義秀展示館(以下「展示館」という。)に入館する者は、別表に定める額の入館料を納入しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、特別企画展の場合にあっては、その経費に充てるため、市長がその都度定める額を徴収するものとする。

とあるように、“入館料”を徴収しようという、図書館無料の原則(公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない〜図書館法第17条)絶対死守論者の諸兄がみればツッコミどころあり過ぎてオールナイトフィーバーしそうなネタではありませんか。
もちろん、それなりの事情はあって、条例では
第3条 中山義秀記念文学館(以下「文学館」という。)に次の施設を置く。
(1) 義秀展示館
(2) 図書館

ということで、
展示機能・博物館機能を有する「義秀展示館」は有料、
図書館機能を有する「図書館法」は無料
ということで、あの昭和館における展示部門と資料室の関係にも似ている。

ところで、小生の仕事場〜公民館図書室〜のことを見直してみた。うちの公民館図書室は、いちおう3万冊以上の資料を集め、専門職員として(不良ではあるが)司書がいる、堂々とした図書館を名乗ってもよさそうなのに、名目は「公民館図書室」であって、“図書館法に基づく図書館”ではない。
昔、先輩にそのあたりのギモンを問いただしたことがありました。
その人の
“あくまで伝聞であるが”とおことわりつきでの説明では、
「本来、図書館法に基づき運営するつもりではあったが、日図協が“図書館無料の原則”に抵することを理由に立ち消えになった」
という。
たしかに併設の公民館・市役所出張所では、施設(部屋)利用料を徴したり、住民票交付手数料の扱いを行ってます。ただし、それは「公の施設」としての目的にかなうものであり、少なくとも営利を目的とした事業ではないといえます。図書館法第17条はたしかに大切な規定であるが、施設の構成や住民のニーズに照らして、なんでも金を取り扱えば有償施設とうのは少し官僚的ではないかと思います。(むろん、日図協云々の真否はわかりませんが)
そのような経験からすると、個人的意見としてはこの「図書館@文学館」大いに結構ではないかと思います。
大切なことは、
図書館サービスを行う
ことであって、法を頑なに守ることがすべてではないのですからね。
(ちなみに、この“図書館@中山義秀記念文学館”、日本図書館協会公共図書館リンクhttp://www.jla.or.jp/link/index.html
に掲載されておりません)

図書館サービスはもっとフレキシブルにあるべきです。これより先は、なんといっても、尊敬すべき二人の賢者が述べておられますので、ぜひご覧くださいまし。

・「図書館」はもっと猥雑なものであっていいんじゃないか〜愚智提衡而立治之至也:G.C.W
 http://jurosodoh.cocolog-nifty.com/memorandum/2010/01/post-fdb2.html
・附帯施設論争の戦後的作用【泰然自若?】〜書物蔵:古本おもしろがりずむ
 http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20100124/p1