春の畦道にて

今日はのどかな日。
開館してほどなく、御年配の利用者さんから電話が入りました。
要約すれば、
「ヨメに頼んで借りてきてまだ読んでない本を返却されてしまった!」
ということ。*1
そのあと、お取置きにかかる説明ややりとりが続き、受け渡しの話になった頃には、(同時進行で端末からその利用者さんが年齢80代なかば、職場から500m以内の居住者であることをつきとめ)半ばヤケ●ソ状態で、結局配達してさしあげることにした。*2
ついでながら、我が市の誇る「ボランティア配本サービス」のチラシを加え、公用車及び公用自転車も出払っており徒歩より出発することに。
50メートルも歩けば、もはや田圃の中。おりからの天気、晴れていてひばりの鳴き声が聴こえてくれば、おさんぽ気分。
だが、直線距離500メートルは案外長い。
時間はちょうど10時。道端には軽トラックが停車していて、荷台では
・“JA”のアポロキャップに作業服上下の男性
・ほおかむりにかっぽうぎの女性
という、このあたりでは実にトラディショナルな服装の御夫妻がティータイムしているところでした。
とーぜん、荷台からは声がかかります。
「おぉぉぉ、図書館さん、どこさいくんだべぇ」
もちろん行先も個人情報、
「ええ、まあ」
と口ごもると、男性は、私の本に目をとめると
「ははぁ、Aさんち行くんかぃ? あそこのばあちゃんは本がすきだからのぉ〜」
図星です。でもそこで
「ピンポ〜ン!」
といえば、それまた個人情報流出。あやふやな笑いをうかべつつ、どうこの場を切り抜けるか、内心考えていたところ、
「いやぁ、わるいわるい、図書館とかの人は秘密を守るのが商売だからな。じゃましたなぁ〜、おい、我々もソロソロ仕事に精出すべぇ」
農村の畦道にもまたどっこい図書館の自由は生きてます!

追伸
約1時間後、自分は本館に出張っているあいだに、匿名の方からアブラナひと抱えの差し入れがあった。対応した派遣さんの話では、名前をおたずねしたら、
「個人のヒミツだからな。親分(=私!)にいえばわかる。」
その方、やはり“JA”のアポロキャップかぶっていたそうな…

*1:まとめれば、一行だけの要旨を聴きとるのに5分以上かかっている

*2:お判りかとは思うが、善意ではなく、ただ気が短いということでの所作