「対立の構図」は公共図書館職員の“心の叫び” 〜おかげさまで今日でブログ開設1周年〜
おわびとあいさつ
おかげさまで、今日、このブログは開設1周年を迎えました。
私にとってのブログ開設は、のちにTwitterのアカウントを作成したこととならび、ソーシャルメディアへの本格デビューでもありました。ご指導ご寛容いただきました多くの方々、本当にありがとうございました。また、おちゃらかしで気分を害された方も必ずおられるはずですがとりあえずお詫び申し上げます*1
めまぐるしい1周年
この間、1年間は本当にいろいろありましたが、
“図書館のカウンターに私がいた!!”
ということ自体、遠い昔々のことに思えてなりません。まだ4か月しか経っていないというのに…
この1年間の出来事は、ARGカフェでライトニングトークをさせていただきましたし、ブログにも書きました。
・雪のつくばで、歩いてしゃべってスベりました ARGカフェ参加
http://d.hatena.ne.jp/hatekupo/20100214/1266111096
あのときは正直なところ、かなり無理をしたというか、気負った部分がありました。でも、同時にあの場であそこでまで語った以上言行不一致は避けたいし、正直見栄とか世間体とかもあります。だからこそ、
迷ったら語ろう、図書館員!
と大声ダイヤモンドで叫びたい今日このごろです。
結果として、今日も不慣れな仕事で悪戦苦闘しながらも、市役所で働くかたわら、“非情勤司書”として図書館についてあれこれ述べています。みなさん、ありがとう。
「対立の構図」とはなにか
さて、図書館界には「対立の構図」というのが一つのキーワード・お約束事みたいになっています。
たとえば、
直営VS指定管理者・民間委託
とか
正規VS非正規
とかですね*2。
このタイトルマッチ。自分が第三者的に眺めればさぞやオモシロイに違いない、と思っていました。ちょうど30度以上を超える炎天下の甲子園球場で行われる高校野球を、エアコンで涼み、冷たいペプシコーラを飲みながらテレビ観戦するように“安楽”かつ“無責任に”眺めようと思っていました。イヤな男ですね…
が、実際には楽しめる気分にはなかなかなれませんでした。
なぜならば、この「対立の構図」はこの一年間、自分自身での葛藤であり、ジレンマでありましたから。
“職場の民営化が決まっても、それでも「司書」を続けたい。”
という気持ちが湧くのは当然のことです。
そこで、
○「公務員」という立場を捨て、「民間委託業者」なり「指定管理者」で働くか?
という選択肢もあれば、一方で
○「“民間がいやだ直営(公営)がいい”というのであれば、自分の自治体での「公務員」を辞職して、他市町村で「臨時」や「嘱託」など「非正規職員」として働くか?
って、これもあり。
どちらを選んでもよし。これぞ職業選択の自由です。
で、残念ながら、いずれの道も自分には難しいと思いました。待遇・賃金の問題はもちろんありましたが、老母を抱えての家庭事情というのもありまして…
でも悩みに悩んだことは事実です。
が、決め手になったのは
“原点に帰れ”
というごく当たり前の、が、重要なセオリーでありました。
思い返せば、20年以上前、公務員を職としたのは
“全体の奉仕者”
としての生きがい・矜持あってのことでした。
そのことをかんがみれば、図書館以外の市役所のどこぞで働いても文句はいえませんよね。
たぶん、少なくない正規公務員ライブラリアンが、
- 民間委託・指定管理者で仕事を追われることにおびえ
- 非正規職員にプレッシャーを感じたり、
なさっているかと思います。
中には、反対運動というものをはじめる方々もおりましょう。
結局のところ、図書館界における「対立の構図」とは、公共図書館で働く司書一人ひとりの悩みであり、不安であり、反発でもあるかと思います。
大事なことは「自分で決める」ということ
少し説教臭い小見出しをつけてしまいましたが、もしあなたの職場が民間委託とか指定管理者になってしまったとしたら、やはりお悩みになるでしょう。もとより「不良司書」を自他ともに認めてきた自分でさえ実は苦しみました。真面目で向上心旺盛な「よゐ司書」の方であれば、心中察するに余りあります。
ここで、大切なのはやはり
「自分で決める」
ということです。これは私も経験しましたが、なかなか難しいことです。
「自分自身について決める」ということは、各々のおかれた立場・環境の中で、自らの能力・年齢・家庭環境などを考える〜つまり自分自身と正面から向かい合い、自らを評価し、決定することですから…
ここで、私の場合にはブログなどソーシャルメディアの活用で十分助けられました。先輩ブロガーから貴いものを得ることもできましたし…
でも悩まれている皆様。過剰にシリアスに考えるのはやめたほうがいいでしょう。
生き方を考えるというのは
「どのような決断を下すか」
ということよりも
「そこでどう努力をしていくのか」
という考えを持つべきかな、って思います*3。
職業ではない「司書」としての生きがい
それでも、私も未練がないといえばウソ*4でした。
ふっきれたのは昨年9月末ごろ。まだ役所が年度内退職者募集を行っていた時期です。人間ドックで病院に行きました。3年前、癌で他界した父を看取った病院でのあの日あの頃が頭によみがえりました。
あの日曜日、父を車イスに乗せて病室から処置室へと向かう途中で、患者ロビーを通過したとき、父は車イスを止めさせ、ある方向を指さしました。
その指先には、ボランティアの方々が「臨時図書館」をやっていました。
患者さんたちはともかく、ボランティアさんが最高の笑顔で貸出*5しておりました。
父はその風景に目をむけながら…
「おまえ、ああいうの(本の貸出)をやってみたいんじゃないか」
「そうだね、ああいうのいいね」
「おれは、この病院で本当にお世話になった。だから、おまえもこの病院のために力になってみてはどうかね」
「ああ、退職したらやるよ」
そんな会話が甦ってきました。(そして、2か月後、父は他界しました)
職業としての「司書」を続けることは困難です。ですが、本当に図書館に愛着を感じているのであれば、必ずしも「職業」として働くのではなく、文字どおり“奉仕”することができるのであれば、これに勝る喜びはないのです。
悩めるすべてのライブライアンへ
またしても、“上からのものいい”のようですが、不安に慄き、判断に苦しみ、悩むライブラリアンへ。広い視野をもち、自分自身を見失わないかぎり、BESTとはいえなくても、かならずよい結果になるんじゃありませんか。そう、信じたいのですが、それを歯切れよく言えないこと自分の立場が歯がゆい。元直営司書の私自身は、自分の心の中にある「対立の構図」を乗り越えましたけど、不安定な立場で働くひとたちを考えると。
まだまだ、「非情勤司書」には考えなくてはならないこと、学ぶべきことがありますねぇ。
笑顔で図書館を語ってください。
あと、現役司書の方々、これからの図書館はやはり市民目線で語ってほしいと。いま『ブックビジネス2.0−ウェブ時代の新しい本の生態系』、読み始めました。
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ダメですよ、それは絶対に。
なぜって、これからの図書館はダイナミックに変貌し、より便利な存在となるわけです。市民(利用者)にとって実にありがたい、すばらしい存在になっていくことは利用者としてうれしい。
ならば、現役司書のあなた、そう、あなたこそがニコニコ笑顔でいなくてはウソです。
みなさんのご多幸を。私も10余年後、退職後から、“病院通い司書”に復帰するつもりです。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
*1:が、その一方で不愉快と思われた団体の方々は、「無視するほうがいい」と代表者が機関会議で発言していただいているようですので、こちらが無視されている=謝罪不要と思い、この方面の方々にはお詫びを省略させていただきます…とはいっても“お詫びを省略”ってフレーズ、なかなかありそうでないぞ…
*2:厳密には、これらの問題、“対立”にすらなっていないのが自分の見解です。が、これについては別の機会にでも…
*3:この説得力の無さはいったいなんだ?!
*4:当初“後ろ髪ひかれるおもい”と書いてもいいのだが、脱毛が心配なんだなぁ、これが…かわりに“ポニーテールとシュシュ”と書いておくか
*5:詳しくそばまで見なかったけど、「貸出履歴」がバレバレ、「図書館の自由」上問題アリアリだったような