「日本図書館協会認定司書」に改めて思う

おわび

前回エントリあげたあと、寝落ちしてしまったのですが、深夜未明に起きてみると、Twitterでは、かなり話題になっているようでした。
不幸にして、働きぶりを0.5と「認定」された方もいれば、ハナから「対象外」になった方々が、相当カッカしているのが目に浮かぶようで、いたたまれなくなり、シャットダウンいたしました。深夜までカッカされていた方々、季節の変わり目に風邪などひかぬよう、またそれこそ余計なお世話ですが、睡眠不足で翌日勤務が「0.5」にならなかったことを祈ります。
自分は、アジテーションもイヤミもするつもりはありませんでした。が、不愉快にさせてしまったことを(僭越ですが糸賀教授はじめ認定事業委員会にかわり)お詫びいたします。

トカゲのしっぽ

さて、私もかなりアタマにきた者の一人ではありますが、同時にこの制度に、なんだかしっくりこない、“違和感”を感じて仕方なかったのですが、やはり実施開始時期が少し遅かったような気がしてなりません。
そも、この「認定制度」というのは、

・専門性の確立と強化を目指す研修事業検討ワーキンググループ報告書(1998.10.14)
 http://www.jla.or.jp/kenshu/kenshuwg/wg%20hokoku1998.pdf

に、ありますように、公共図書館における司書の配置率が低いこと、また、図書館長の司書資格要件等の廃止がとりざたされる中で、高度な専門性をもった、司書を養成し、それらが社会的評価をえることにより、司書の存在価値をアピールしていこうというねらいがありました。
その後、経済問題、特に地方財政の悪化や、新自由主義にもとづく諸策〜民間委託・指定管理者制度*1や、「短期雇用・雇い止め」が進められます。
特に現職者にとっては、民間委託・指定管理者制度は格別な脅威であったと思います。
結果、この制度は糸賀教授が図書館雑誌
「必勝」 とは言えないまでも 「このまま負け続けない」 ために打つべき一手*2
まぁ、先の大戦で、米本土上陸まで夢想していた大本営が、長野県松代に「地下大本営・御所」を設立したのと同じで、“逃げ場”を確保しようというのが、今回の趣旨のようにも見えます。
今回、重大な「穴」として指摘したいのは、
「公立図書館に勤める者全体の救済」
にも
「公立図書館での司書職制度の確立」
にも、この制度が有効な策とはいえません。
いまの「雇い止め」が厳として存在する以上、これから先、「10年間」のキャリアをもつ司書自体、減少、というより本伽羅木にも匹敵するような珍重品になるでしょう。
といえば、考えられるのは
「トカゲのしっぽ切り」
いま、ワーキングプアと言われるような、過酷な条件ではたらく若者を切り捨て、現職のベテランだけが生き残る策なのです。

なぜ、大学・学校図書館国立国会図書館は冷遇されたか?

これもまた、大きな問題です。「補正係数0.5」というのは、大学・学校図書館*3国立国会図書館で働く人をバカにした策としか、言いようがありません。
この「内規」が、もし日本図書館教会のしかるべき機関「理事会」「評議委員会」をとおしたのであれば、必ずや「大学図書館」「学校図書館」各々の部会の方々が、異を唱えたことでしょう(そうでなければ、出席した部会関係理事、評議員には「あえて言おう、カスであると!」)。
この「内規」、おそらく、「日本図書館協会認定司書事業委員会」の“独断専行”であると、私は考えます。
そもそも、初期の段階では

・高度な専門性を評価する名称の付与制度の検討について(報告)
 http://www.jla.or.jp/nintei/WG/hokoku020605.pdf

では、

1999年3月1日付 理事長からの諮問内容
〈専門性の確立と強化を目指す研修事業について〉
検討事項
・ 社会教育分科審議会が提起した「高度な専門性を評価する名称の付与制度」について、具体化する方策を提案していただきたい。公共図書館だけでなく、大学図書館員を対象とする案も出していただきたい。

と、ありますから、必ずしも最初は「公共図書館オンリー」ではない事業でした。
まぁ、公共図書館を「皮切りに」はじめること自体悪くはありません。
が、その中身自体が「尻尾切り」である以上、
「皮(非常勤)を切らせて、肉(学校・大学図書館)も骨(NDL)も断つ」
そこまで、追い込まれているのが、公共図書館の現状。もはやなりふり構わず…
もはや、このあたりが日本図書館協会にとっての
「絶対国防圏」
といえそうです。

*1:一つのトピックとして、取り上げただけで、指定管理者制度及びその制度ではたらく方々に対し、「嫌悪」「批判」「責任転嫁」する意思はありません

*2:図書館雑誌2010年7月号(VOL.104 NO.7)

*3:ここでは、それぞれ性格や事情の異なる学校図書館大学図書館を一色単にしてますが、おのおの別個に表記すると長くなるので、短縮のため、そう表記してます。ごめんなさい!