“なんちゃってプロポーサブル”の威力と限界

追記・このエントリは「Tariki」氏の“コメント”も合わせてお読みください

決戦は土曜日?

さる11月6日夜は、日本シリーズも、「ヨコハマブックブククラブ Presents ラボ図書環第1回ワークショップ+ツアー」も大変盛り上がりましたね〜。自分としては、後者参加の皆様が、厳戒態勢の横浜で“怪しい集団”扱いされなくてなによりだったと思います。
さて、私は@Vipper_The_NEETこと「たりき氏」による“岡崎市公文書開示請求結果読書会”Ustに耳を傾け、おおいにこれまた興奮したワケです。
残念ながら、聴き取りにくい部分もありましたので*1、誤り(空耳)もあろうこと思いますが、以下、自分が感じたことを述べます。

単なる価格競争は愚だけれども

かつて、私は次のようなエントリ

・なんでも入札=価格競争の愚が技術立国ニッポンを揺るがす〜図書館コンピュータシステムの現状から(2010-8-30)
 http://d.hatena.ne.jp/hatekupo/20100830/1283096378

において、図書館システムの導入について、「価格」だけではなく、性能や信頼性などの「品質」で選択することを主張しました。
ただし、現行法制下でも、そのような「契約先選定」は可能であり、実施例も多い「プロポーザル方式」です。業者選定・契約締結をしています。単なる価格競争ではなく、ベンダー各社に提案をしてもらい、もっとも優秀とされる業者を選ぶというものです。
単なる「価格競争」ではないことが、この方式のミソです。
どこに評価のポイントをおくかは、その自治体(図書館)によりけりですが、いずれにしても健全なる「競争」であればよいのですが…

ベンダーと図書館員の利害は一致するが…

図書館の電算システムは、当然ながら「契約更改」を迎えます。
そのとき、ベンダーと図書館職員の「利益」は一致します!
すなわち、

  • 顧客(図書館)を他社にとられまいとするベンダー
  • 契約更改(=機種変更)では、できればリスク(変更にともなうもの)と事務処理は、最小限に済ませたいと思う担当職員
  • 自分が異動するまでは、とにかく穏便にコトを運びたい管理職(新技術導入への抵抗)

いずれも、現状維持を願っていますから、まさに、相思相愛、一蓮托生。この中で「競争」をできれば“八百長”とか“出来レース”に仕立てあげたい、そんな機運がおこっても不思議ではないでしょう。

「得意科目」で「黒星」

さて、岡崎市の「プロポーサブル」では、高評価だったのが「Web対応」と「セキュリティ」だったようです。
で、このご自慢の2つが、その後どのような“なりゆき”を見せたのか、皆様承知のとおり。野球でいえば、期待の4番打者が、6−4−3のダブルプレーに討ち取られたのようなあっけなさです。(正直、白状すると「たりき氏」の実況を聴きながらも、目はしっかり日本シリーズ観てましたわ…)
ちなみに、「Web対応」と「セキュリティ」に高評価を与えた人たちって、何を基準に選んだのでしょうね。私は、公共システム事業分野でCMMIレベル5というこの上ない称号を佩用したMDISの「売り込み」の成果だと思っています。
まぁ、「プロポーサブル」をどこまで本気にやったのか、うかがいしれませんが、個人的には「Web対応」と「セキュリティ」に高いポイントを与えた職員は、結果責任として、期末・勤勉手当(=民間のボーナスにあたる)を半分カットする処分を出してもいいような気がします。

随意契約」と「出来レース」の限界

まぁ、「プロポーサブル」をどこまで本気にやったのか、うかがいしれませんが、業者を選定したら、次は契約事務に移ります。契約の方法はみなさまごぞんじ「随意契約」です。
簡単に述べれば、本来、地方公共団体が行う契約は入札によることが原則(地方自治法第234条第2項)なのです。しかし、法令及び条例の規定によって認められた場合にのみ随意契約は容認されます。
「プロポーサブル」による業者選定もまた、随意契約の対象となるのですが、ここで岡崎市随意契約の理由として奇奇怪怪な理由を述べています。
三菱電機の“特許”だからである*2
というのが、その理由だそうです。
まぁ、今まで使用してきたミツビシの製品は“知的生産物(これは認めてもいいが…)”であり、他社が扱うことで、その特許・著作権が侵害される、といいたいわけです。
まぁ、居直り、ともとれますが、小役人根性のワタクシは、そこに自治体内の苦しい事情に思いをはせました。
近年、随意契約は、その非透明性・競争抑制などのデメリットが批判の対象となり、どの自治体もその運用にあっては、厳格化しております。
憶測ですが、岡崎市立図書館の担当職員は「プロポーサブル」で、随意契約を乗り切る作戦だったと思います。しかし、高額な契約額に照らして、厳格な入札審査の前で看破とまではいかなくても、納得にたる十分な説明(特に「Web対応」と「セキュリティ」に高いポイントを与えたなど…)できなかった、あるいはする自信がなかったと…
困った担当職員はのび太ドラえもんにおねだりするように、
「なにかな〜い?」
で、出てきたのが件の理由なのでしょう。
私は、この“随意契約の理由”は、「八百長プロポーサブル」の限界・破たんを示しているといえそうです。

それでも、私は「非価格競争」

この件は残念な例でありました。でも、それでも私は先のエントリに書いたように、
私は公共工事と同様に「役務の提供」をはじめとした委託契約においても同様の趣旨で法律が制定されることを切望します。ベンダー各社の積極的な技術提案及び創意工夫が活用されること等により、ベンダー相互の「健全な技術競争」により、図書館コンピュータシステムの“底上げ”“技術向上”が図れると思われるからです。
と、思います。そして、それを活用しうる職員が生まれ、活用されることを!*3

*1:失礼ながら「生たりき氏」のナレーションがうまいので、驚きました。冷静に淡々と述べているがゆえに、迫力を感じました

*2:このあたり、正確を欠くかもしれませんので、ご存知の方は、訂正のコメント願います!

*3:ここでもまた、「Code4Lib JAPAN」にゲタをあずけると、さすがにワンパターンの極みであるから、省略