OPACによる「情報提供」が市民本位であれば、あの事件は!

OPACによる「情報提供」が市民本位であれば、岡崎事件はおこりえなかった。

利用者の選択の幅を広げ、問題解決に力を発揮するはずのOPACが、実は選択の幅を狭め「ベストセラー」偏重に大きく貢献してしまったのではないか、という問題提起をさせてもらいました。その中で「新着コーナー」のカラクリについて推察しました。
「新着コーナー」に掲載する条件は、各館各々仕様が異なるでしょうが、
“受入から一定期間内を経過していない資料”
という定義づけをし、該当する資料情報を提示するのが一般でしょう。
その結果、ベストセラーの複本導入につれ“時間差攻撃*1が発生する“ヘビーローテーション?!”について触れました。
この「新着コーナー」は、どの図書館も当該資料を羅列するだけで、受入年月日によるソートや絞込みすらできない状態で掲示しているだけが多いようです。これが「常連=お得意様」の市民から見ると、少々見難い、ハッキリいわせてもらえば「不親切」と断言してもいいようなコトになります。
その理由はなぜか?
新着資料の該当期間を10週間遡って紹介している館があるとします。この館をヘビーユーザーの方が毎週定期的に訪れたとします。その方は、その前9週間分の「新着」はすでにチェック済みとなっていますから、その方にとって知りたい情報は「過去1週間分」あれば足ります。
「大は小を兼ねる」
とはいうものの、この方の場合、10週間の残り9週間は「ノイズ」になるワケですね。
これはご本人にとって不便なこと極まりない。そこで、自分が「新着資料」だけ入手すべく「クローラ」を作成し実行したところ、その相手方がどうにもならないポンコツOPACであって「業務妨害」とみなされ、ブタ箱に放り込まれてしまったとしたら、これはもう社会的な問題となりますね。
そう、“Librahack事件”とよばれる“岡崎市中央図書館事件”のことです。

岡崎市立中央図書館事件~Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%A1%E5%B4%8E%E5%B8%82%E7%AB%8B%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8%E4%BA%8B%E4%BB%B6

岡崎事件から2年たつというのに…

歴史に「If」は禁物ですが、私としては、もし同図書館の「新着案内」に絞込みや並び替え機能があれば、件の男性は「クローラ」を自作することもなければ、それを実行して逮捕されることはなかったかと思います。
あの事件から2年が経過しました。あの事件は多くの教訓を図書館界にもたらしました。結局話題は「図書館の自由」とか「ベンダーとの契約」などに向かいがちですが、利用者サービスの視点から、まだまだ学ぶべきことが多いように感じます。

私は「図書館員」をやめることで「倫理」をえたと思う

もっとも、そのような「提言」したところで、所詮カタギのご立派な図書館員からみればAKBヲタの思い付きなどガン無視することでしょうね。それが「図書館員の自由」であり「図書館員の倫理」ですから。
前回のエントリでは、新着図書がベストセラーになると、「新刊案内」に長期間滞在し続けることを指摘しましたら、コメントか何かで、
「自分の推薦する本はどんどん買い替えて「新着案内」に常に載るようにしたい」
趣旨の発言がありました。ネタとはいえ、買い替えの「財源」は? 買い替えの必要性は?(もちろん「税金」です) と、いったことなぞ考えてもいないし、また、本当に「オススメ」をしたいなら、他の方法を模索しようともしない、まぁ、イマドキの図書館の人がAKBヲタを見下すと、そうなるのでしょう。このような手合いと自分が同じ職業でない、ということに安堵しました。
市民の税金でベストセラー買いあさり、それが「業界のためにもなっている」とうそぶき、不親切・ぜい弱性高いOPACをベンダーのいいなりに「税金」で導入し、あげくには「納税者」を逮捕させてしまうというていらく…
いま、私は禁煙と同じくらい「図書館員をやめた」ことは自分にとってよかったと思います。

*1:おお、日本女子バレーは実によかったなぁ…