公立図書館の指定管理者制度について【望ましい】反対意見

自分の通夜/告別式を台無しにする男

私の欠点は、リテラシーがおぼつかないことだと常々思っておりましたが、今更になって、コミュニケーション能力自体上手ではないことに気がつきました。
一般の利用者さん相手なら、客あしらい(失礼!)は一般の司書並み以上をうぬぼれておりますけど、同業者相手は正直苦手でありまして…
司書をやめる前後は、同業者の方々より「お悔やみの言葉」ばかりいただき、まるで自分の通夜か告別式の場にいたような感じでしたが、当の本人は「自虐ネタ」で笑いをとることしか考えていないから、うまくかみ合わないったらありゃしません。同情してくださった方にしてみれば、さぞ不本意だったに違いありません。まるで、告別式に参列、焼香し個人を偲ぼうとして祭壇の遺影に目をやれば、黒枠の中の写真は笑顔(これは当たり前か…)でピースサイン(こりゃ、ありえない…というよりも芸がないか)をしていて、吹き出しに「遺影(当然「イエーイ」とルビがふってある)!とあれば皆顔を真っ赤に(もちろん“怒”のため。まちがっても噴き出すのをこらえることはない)して帰っていくようなものですから。

「指定管理者・民間委託推進論者」としての誤解

それにもまして、同業者の覚えめでたくない理由は、自分が「指定管理者・民間委託推進論者」であるかのように「誤解」されていることです。まるで、「殉教者」として持ち上げられたが、一転して「裏切り者ユダ」へと扱いがかわって来るのも仕方ないのでしょうか。
たしかに、

・【ステタ市は】図問研イマドキ情報【ステちゃえば】(2010-2-25)
 http://d.hatena.ne.jp/hatekupo/20100225/1267032069

なぞ、書いておりますので、「反対の反対」と思われても仕方ないことです。
「反対の反対」とは、我ながら“ネガ中のネガ”“後ろ向きの二乗”、あまり建設的ではないとは思いますが、幼稚・稚拙な「反対論」にはどうしても「反対」したくなります。ウラを返せば、今までの「反対論」があまりにも、情緒的・感情的・現状維持的であり、かつ不合理なものが多いと思えるからです。

私が幼稚・稚拙な反対論(運動)を批判し、“反対”する理由は次の4つ。

  • 「指定管理者・民間委託反対論」の多くは「現状維持」に終始し、図書館全体の今後の方向性・可能性についての活発な議論を阻害する
  • 反対論の多くは、職員の立場からのものが多く、「利用者不在」のものが多い。
  • 「反対論」を権威ある職能団体・研究会などがおこなうことで、直営館司書のモラル・ハザードを生んでいる。
  • 法的リテラシー・合理的思考を欠いた、幼稚・稚拙な反対論が図書館界の名誉を著しく損ねている。

職能団体の「反対論」はどこが問題か?

それでは「反対論」はどこが問題なのか、
わが国でもっとも権威ある(ということにしておきます)日本図書館協会の意見書

・公立図書館の指定管理者制度について(2010年3月)
 http://www.jla.or.jp/kenkai/201003.html

を見ていきましょう。

日本図書館協会は、公立図書館の管理運営形態はそれぞれの自治体、および図書館の状況に合わせて創造されるべきもの、多様であるものと考えております。しかし指定管理者制度の適用は適切ではないと考えております。

この書き出しはよくありません。“図書館の状況に合わせて創造されるべきもの、多様であるもの”の選択肢の一つとして指定管理があるじゃないかといわれちゃえばそれまでです。しかも“地方自治の本旨”にもとづく地方教育行政の独自性に圧力・口だししています。

司書集団の専門性の蓄積、所蔵資料のコレクション形成は図書館運営にとって極めて重要なことですが、これは一貫した方針のもとで継続して実施することにより実現できます。


はて?
私は今まで“所蔵資料=コレクション”として、同義語と思っていましたが、最近のJLAは、屋上屋がお好きなのでしょうか?
それとも、図書館用語集の改訂で、両者は別物あつかいとなったのでしょうか?

図書館は設立母体の異なる他の図書館や関係機関との密接な連携協力を不可欠としています。さらに図書館は事業収益が見込みにくい公共サービスであり、自治体が住民の生涯学習を保障するためにその経費を負担すべき事業です。こういった点からも図書館は、地方公共団体が設置し教育委員会により運営される仕組みは極めて合理的です。

“他の図書館や関係機関との密接な連携協力を不可欠としています”というのはそもそも図書館法に規定されていることであるから、当たり前のことですが、「学校、博物館、公民館、研究所等と緊密に連絡し、協力すること(図書館法第三条第九項)」を、本当に忠実に実施している直営館がどれだけいるかあやしいものです。

民間において図書館の管理を安定して行う物的能力、人的能力を有した事業者があるか、指定期間が限られているもとで事業の蓄積、発展ができるか、経費節減により図書館で働く人たちの賃金等労働条件に安定性を欠く事態が招来しないか、など指定管理者制度にある本質的ともいうべき問題点があります。


“経費節減により図書館で働く人たちの賃金等労働条件に安定性を欠く”ということは、直営職場においても非正規職員化・雇い止めなどの事態がすでに招来しており、官製ワーキングプアの本質的ともいうべき問題点を無視しています。

地方自治法は「公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるとき」に指定管理者制度の適用を許容していますが、他の施設の場合はいざ知らず、公立図書館での事例にはこの点に照らした説明が十分ではありません。

この“いざ知らず”というのが最大のウイークポイントです。
指定管理者制度はどのような施設に導入されることによってどのような効果が期待できるのか?”
“他の施設と比較して図書館という「公の施設」はどのような特質があるのか?”
という重要な問題を無視するとともに、
図書館司書は所詮図書館のことしか考えていない!
という事実、いや“あやまった価値観”を植え付ける結果になるからです。

図書館への指定管理者制度導入は、文部科学省調査によれば203館(6.5% 2008年10月現在)、当協会調査では2008年度までに導入した図書館のある市区町村は98、2009年度に導入予定図書館のある市区町村は25、合わせて123市区町村です。一方導入しないと答えている市区町村は471あります(2008年5月調査)。図書館での導入は極めて少数であることを示しています。都道府県立図書館においても導入しないと答えているところは26あります。
 図書館協議会において時間をとって議論された事例を聞きますと、再検討や中止を具申するものが多く、導入を促す事例はほとんどありません。議会においても同様で、図書館への導入を積極的促す発言よりも、図書館の役割、住民の期待などを論じ、サービス充実のために態勢強化を求めるものが多くありました。
このような状況を反映したものと思われますが、先の国会では公立図書館など社会教育施設指定管理者制度について肯定する意見がありませんでした。“図書館への指定管理者制度適用は、住民サービスの向上、経費削減を図ることを目的とされているが、図書館サービスは、単に利用者数が増えるとか、開館時間数の延長、開館日数の増といった量的なものだけでは測れない性質のものがある、経費削減により安定した長期雇用が保障されず、短期的の職員の入れ替わりによる弊害が生じている、やはり職員の質の向上が大切だ”、との議員質問に対して、文部科学大臣は、“公立図書館への指定管理者制度の導入は長期的視野に立った運営が難しくなり、図書館になじまない、職員の研修機会の確保や後継者の育成等の機会が難しくなる、やっぱりなじまない”、と答弁しました(2008年6月3日 参議院文教科学委員会)。
 また国会に招致された参考人は、“指定管理者制度の基本的な目的である経費節減が職員の労働条件などいろいろなところに波及していくこと、管理期間の指定は、人々のいろいろな要求をつかまえながら進めていく息の長い継続性が求められる地域の社会教育の営みになじまない”、と制度的問題があることを述べました。


力説するのは結構ですが、読み手の立場を考えて、もう少し簡潔にまとめられないものでしょうか?
市役所の起案文書などにこのような文章を書けば、まず書き直しを命じられます。

これらの論議を受けて国会は、「国民の生涯にわたる学習活動を支援し、学習需要の増加に応えていくため、公民館、図書館及び博物館等の社会教育施設における人材確保及びその在り方について検討するとともに、社会教育施設の利便性向上を図るため、指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮して、適切な管理運営体制の構築を目指すこと。」との附帯決議をしました。
さらに総務省は2008年度の地方財政運営についての通知のなかで、特に指定管理者制度を取上げ、検証、見直しの留意すべき事項を示しました。公共サービス水準の確保、専門的知見を有する外部有識者の視点導入、適切な積算に基づいた委託料など19項目におよぶものです。これらを図書館の管理運営の内容にそってつぶさに検討すると、指定管理者制度は図書館には無理な制度であることが明らかとなります。
この間指定管理者制度を導入した例をみると、十分な情報提供や説明がなされず、図書館協議会にも諮ることなく実施に移されたところが多くあります。住民団体総務省に、住民への説明責任を果たすよう地方公共団体に徹底することを要請するほどです。私どもは、図書館は利用者、住民と図書館との共同によりつくりあげていくこと、連携協力により、それぞれの自治体の実状に応じた管理運営形態が創造されることを期待しています。
 国会の附帯決議にあります「適切な管理運営体制の構築を目指すこと」の検討に資するよう日本図書館協会としても情報提供や意見表明などを引続き行っていくよう努めて参ります。


ここも図書館員の法的リテラシーが“疑われる”ような場面。
指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮して、適切な管理運営体制の構築を目指すこと”
とは逆をいえば
“適切な管理運営体制の構築を目指すため、指定管理者制度の導入にあたっては、その弊害についても十分配慮すること”
ともいえます。
よく山道で、「落石注意!」の標識を見ると、その場を早く走りぬけようと猛スピードを出す若者がいますし、反対に落石があるので通ってはいけないものとカン違いするようなものです。
“えっ、なに?! オマエ、突っ込むだけ突っ込んで、自分の意見を言ってないだろう! だって?”
よくぞ、お気づきになりました。
それでは私案を紹介しましょう!

公立図書館の指定管理者制度について【望ましい】反対意見

公立図書館の指定管理者制度について(日本図書館【教】会)

公立図書館は、利用者がその求めに応じ、各々の学習意欲や問題意識に応じ、学習や問題解決を図るだけでなく、国民の「知る権利」を保障することによって、日本国憲法が謳う「民主的で文化的な国家」や「地方自治の本旨」の実現に寄与しています。
そのため、公立図書館の運営に当たっては平等と公正な態度が求められます。
さる平成15年、地方自治法の一部が改正され、第二百四十四条第3項では「公の施設」での「指定管理者制度」が導入されました。この制度は、“公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるとき”に許容されるものです。公立図書館は「公の施設」であると同時に「社会教育法」及び「図書館法」に基づき運営されるものですから、指定管理者制度の導入はこれら関係諸法及び条例に基づき判断されなければなりません。
図書館法第第二条では、公立図書館の設置主体として地方自治体を予定しております。また、従事する職員は同法第十三条により“ 公立図書館に館長並びに当該図書館を設置する地方公共団体教育委員会が必要と認める専門的職員、事務職員及び技術職員を置く”と規定されており、中枢ともいうべき業務は地方公共団体職員の手により行われるべきです。
以上のような理由から、公立図書館における指定管理者制度の導入は慎重を期すべきであると考えます。


どうも「病気」のせいでまとまらない内容になってしまいましたが、ぜひ皆様も起草してみてはいかがでしょうか?