目録も装備も選書も、みんなまとめて委託しちゃえ!

図書館委託史

前回に引き続いて、ヤバい話、図書館と出版流通の話です。
が、その前提として「図書館委託史」を振り返ってみましょう((ただし、図書館の本質的役割以外の分野、たとえば施設メンテナンス(空調・消防設備点検・エレベーターリフト点検・施設清掃など)は省きます。))。
なお、地方自治体でいう「委託」とは、地方自治法等でいう歳出予算のうち「委託料」で支出されるような性質のものをいいます。一般的には次のような場合の出費(歳出)は、「委託料」で計上しているようです。

  • 地方公共団体が直接実施するよりも他の者に委託した方が効果的である場合
  • 自治体がその自治体固有の事業として行うべきものを外部の者に行わせる場合

しかしながら、これらの例によらない、間接的・実質的な「委託」も登場します。

すべては「電子計算機」からはじまった

私の経験では、図書館機能にかかる分野で、本格的に「委託料」が登場したのは、図書館電子計算機(少し古い表現だが、過去を振り返っているのでご勘弁ください)の登場からだったと思います。
(いまでいう)ベンダーさんやメンテナンスさんに支払う維持管理料はもちろん、「MARC」が登場したことで、「MARC作成委託料」が登場してきたワケですね*1。ここで、司書の職務のうち、資料の組織化〜分類や件名の付与・目録作成など〜が「委託」されました。
私は平成の時代に図書館司書講習を受講いたしましたが、「MARC作成委託」のおかげで、マトモな目録をほとんど作成しないで、司書人生を終えました(そりゃAVとか逐次刊行物くらいはつくりましたけど、「目録カード」は一度もつくらなかったですね、無念…っていうコトでもないや)。

毒食わば皿まで、分類はラベル貼りまで

こうして、「MARC」が書誌ユーテリティによって供給されると同時進行で、新たな「委託」が発生します。

  • 書誌をつくってもらったなら所在情報((商品名は「ローカルマーク」というらしい))も!
  • 分類してもらったら、背ラベルも!

ということで、所在情報・装備済で資料を納本してもらうサービスがはじまります。「資料の保存・配列」のための装備まで「委託」してしまうワケですね。

ついには「選書」まで

ここまでいくと、カウンター業務と選書くらいしか「司書の専門性が発揮されるであろう仕事」というものは残ってませんね。その選書についても、

  • あらかじめ分野を指定すると、当該分野で(公共図書館が)必要であろうとされる本を選書して発売後すぐに納本する新刊急行サービス*2
  • 油断していると買いもらしてしまう全集や年鑑類などを定期的に送ってもらえるサービス*3

私もおおいに重宝させていただいたけど、やはり地元書店さんには申し訳なさというか罪悪感というか、うしろめたさが否めませんでした。

「委託」の拡大再生産

さて、最近、どうも
「委託が委託を生んでいる」
ように思えます。
窓口業務の委託で、司書は「選書」が最後の砦になっていましたし、またこの業界では、
「クレイマーばかりの窓口(特に分館)は委託し、もっとも専門性と経験が求められる(と、されている)選書を事務室で司書が行う」
ような棲み分け、分割統治、妥協策が館界ではまかりとおっています。
現役正規司書にとっては、“本領安堵”であることが最大のポイント。
もっとも、
「選書こそわが職務」
とイキがってみたところで、そういう輩に限って「選書眼」というものもなく、また分館それぞれの特色や事情を顧みるようなやる気もなく、面倒くさがる始末。結果として各分館には新刊急行とかのサービス契約を充実させて、ハイ、終わりの構図です。
窓口・分館業務を委託した結果として、「選書」の「委託」がますます進むという構図。
このような現状を耳にすると、この私をしても
「いっそ、指定管理者にしてしまえばいいのに」
とまで思いたくもなる、そんな「現状」でも当の司書たちは、
「自分たちはかけがえのない専門職である」
と主張するのでしょうが…

*1:ちなみに、「MARC」の代金を役務費とか需用費で支払う自治体も多かったと思いますが、私自身は「委託料」による支出が適正だったと思います。

*2:商品名はあえていわないけど、本当に“Book Express Line for Library”だったなぁ

*3:まさに「(新)継続は力なり!」