「官製ダンピング」がワーキングプアをつくる。そこに気がつく図書館員はいずこにありや、全図書館界は知らんと欲す。

すぐれた公共図書館Webシステム構築とベンダーとの良好な関係づくりとの関わりについて考えておりましたが*1、そこからスピンアウトしたことを書いてみました。


「安かろう悪かろう」
「安物買いの銭失い」
このような教訓は過去のもの。
いまは
「安いが一番!」
の時代です。

官公庁、特に地方公共団体では、業務委託契約の契約選定には「競争入札」が原則となっています。
もちろん「競争入札」には財政の節減や透明性の確保など、すぐれた部分は多いのですが、言い換えれば官製のダンピング競争、チキン・レースともいえます。

以前、「官製ワーキングプア」についてこんなエントリーをあげました。

・官製ワーキングプアってなに?(2009-10-19)
 http://d.hatena.ne.jp/hatekupo/20091019/1256039354
・非正規職員を踏み台にして“委託ハンターイ!!”を叫ぶのはやめろよな(2009-10-22)
 http://d.hatena.ne.jp/hatekupo/20091022/1256217764


正規公務員司書のみなさまが、非正規職員の体待遇を棚に上げて委託を攻撃している姿が腹立つぐらいに滑稽でしたので、このようなエントリを書いたと思います。
が、同時に民間委託で働いていらっしゃる図書館員の方々が待遇の低さに苦しんでいることが多いことも承知しておりました。

では、なぜ委託業者の待遇に悪いものが多いかといえば、やはり
「安いが一番!」
ということで経費をケチるから。
とはいえ、削減できる経費の額も方法も限られてきますから、もっとも比重が高く、手っ取り早い人件費の節約に向かいます。
一言に人件費の節減といっても「人員削減」「賃金カット」の2種類があるわけですが、前者の場合、たいてい必要な人員数を「仕様書」で条件づける場合が多いですから、どうしても後者に頼らなくてはなりません。

資本主義社会ですから、ある程度の健全な競争はあってかまいません。が、過度の行き過ぎた競争〜ダンピング〜はいかがなものでしょうか?
官公庁における契約の中でも人件費の比率が高い役務に関する業務委託の総額はかなりのウエイトをもちます。そんな委託事業費の節減は、従事する受託者で働く従事者の給与を節減し、購買意欲の抑制・勤労意欲の低下などの社会的経済的損失をもたらすことになります。
そもそも図書館サービスを叩き売りしていいものでしょうか?

もちろん、このような現状にかんがみ、平成21年には
公共サービス基本法
が制定されました。
が、この法律は理念を述べただけで、公共サービス改善の具体化に言及せず、また国または地方公共団体に対し明確な基準・罰則規定もありませんでした。私の目から見れば、
「委託反対の人たちのために一応こんなものつくりましたヨ」
といわんばかりの“アリバイ”法にすぎません。
なお、余談ですが昨年開催された全国図書館大会第2分科会に参加したとき

・無念! 大将首を狙って、体よくかわされた話 〜全国図書館大会第2分科会(2009-11-04)
 http://d.hatena.ne.jp/hatekupo/20091104/1257340739

職員問題対策の一つの方法として
「“公共サービス基本法”を活用してみては?」
と、質問の形でなげかけましたが、登壇していたお偉いさん誰もが「同法の存在を知らない」ご様子でありましたから、それはもう、おさんと鹿さんのデュエットを見たような気分でしたね…あのときは…

そんな馬鹿なハナシ*2はさておき、公共工事の契約には新しい動きがみられます。
単なる価格競争ではなく、信頼や技術力などの品質管理に着目した、
公共工事の品質確保の促進に関する法律」
が制定されています。
ざっと要点を紹介します。

  1. 発注者(=国及び地方公共団体、以下同じ)は、発注関係事務を適切に実施する責務がある。
  2. 受注者は、工事を適正に実施し、かつ技術的能力の向上に努めなければならない。
  3. 発注者は、入札参加希望者の技術的能力を審査し、総合評価をしなければならない。
  4. 発注者は、入札参加希望者に対し、技術提案を求めるようにする。出された技術提案は適切に審査、評価しなければならず、改善を求め、改善を提案する機会が与えられなければならない。

いかがでしょうか?
「工事」を「サービス」「奉仕計画」に置き換えただけでも、かなりの改善が期待できそうです。
ただし、実現はといえば、かなり高いハードルばかりのようです。同種の法律「公共役務委託の品質確保の促進に関する法律」を制定し、運用させるまでが大変ですし、仮に制定されたとしても「総合評価」をどうするのかというのが最大の問題点になりましよう。(公共工事の場合には、一応発注者(=国及び地方公共団体)に、建築主事というプロフェッショナルがいるからOKなのです)

ただ、いずれにしましても小生の提案が陽の目を見ることはありますまい。我が国図書館界でイニシアチブをとるべき団体が、高齢化・老害化・脳軟化の減少で、委託事態絶対まかりならんとの見解を絶対的なものにしているからです。

**長くなりましたので、今回のまとめ
正規公務員図書館の方以外、待遇は良くなることはありません。
「官製ワーキングプア」として苦しむ非正規の方は、正規公務員司書の延命策・捨石・犠牲となっていただなければなりません。
「指定管理者」「委託受託者」で働く方、皆様の中で低待遇等にお悩みの方は、それが正規公務員司書の皆さまのプロパガンダに使われなければなりません。
正規公務員図書館以外の図書館労働者、団結せよ! 光と力が諸君にあらんことを!!

*1:できれば、ある職能団体の北だか南だかわかんないようなコーナーに投稿しようかとも思っています。

*2:もちろんあらゆる意味でのこと