みんなで「殻を破るために」

おおよそ「図書館司書」というものは

「知の集合体」たる図書館につとめる司書というものは、森羅万象、あらゆる知識体系に対し、幅広い視野とともに、公平さ、謙虚さを持たねばなりません。
が、実際のところは、かなり隙だらけにも思えます。
来館者に対しては、熱心・親切を心がけていても*1、非来館者サービス(図書館ポータル・Web-OPAC)に対しては業者まかせ、無関心なのは、あの岡崎市立中央図書館事件で“ナパーム弾の炸裂以上に明らか*2であります。
「子どもの読書活動の推進に関する法律」では、子どもを“おおむね十八歳以下の者をいう”と書いてあるのですが、幼稚園・小学生は笑顔で迎え、絵本や童話の収集も、読み聞かせも一所懸命工夫する一方で、中高生のライトノベルは意に関せずの「シカト」したりする場所も少なくありません。
「あらゆる知識体系」への対応というのも、「単眼」ではなく、複数の「司書」という専門家集団という「複眼」でとらえれば、問題がないはずです*3
が、いかんせん司書というのは所詮「文系人間」のカタマリですから、おのずと理系は不得意(「理科」はなんとかなっても「物理学」「化学」になるとお手上げになる方が多い)になり、収集や企画に「文系偏重」というか、いびつさが出るのも仕方ありません。
岡崎事件でも明らかにないましたが、こと「図書館の自由」についても、文系の範疇であれば能弁、舌鋒きびしい先輩司書のみなさんも、こと“サイエンス”になると“サイレンス”。

「文系の牙城」としての殻は破られねばならない

うれしいことに、そのようなカラを破るような取り組みも散見されます。

・キッズサイエンスカフェ in ふくいけんりつとしょかん(福井県立図書館公式ホームページより)
 http://www.library.pref.fukui.jp/info/kikaku/event_kikaku.html#cafe

鴨長明ではありませんが
「行く情報のながれは絶えずして、しかも本のコンテンツにあらず。」
が常ですから、上記リンクは早々にリンク切れになるかと思います。
一応、当日講師(補助)をつとめられた@arg氏による簡単な報告がありますので、

・キッズサイエンスカフェ in ふくいけんりつとしょかんで講師(補助)(2010-10-9)
 http://d.hatena.ne.jp/arg/20101012/1286813853

こちらでみることができます。
この催しで重要なのは、図書館には珍しい理系イベント(しかも「実験」つき!)であること。
考えてみれば、子ども、特に男の子は基本的に「理科が大好き」なのです。
大事なことは、このイベント実施の意義と慧眼を見抜き、学ぶことです。
財政当局や仕分け人などの方にいわせれば、
「どのような効果があったのか?」
とツッコミの一つでもはりそうです。
ただし、本当の効果といえば、参加した子どもが一定の年齢に達するまでわからない。おそらく「最大の効果」は、参加した子どもの中から“ノーベル賞受賞者”があらわれることでしょう。
もちろん、それは可能性として、宝くじ高額当選以上に低いかもしれないのですが、
「買わない宝くじは絶対に当たらない」
というのが真理です。

大人のための科学教室

科学教室といえば、大人向けに科学実験などを行う教室が大変人気なようです。
ほかにも「大人の工場見学」「大人の社会見学」なども。
ただたんに、懐古趣味で参加しようというのでもなさそうです。最近、一般社会人向けの歴史教科書などがよく売れているようです。
思えば、数年前「生涯学習社会の成立」をねがって、また、いわゆる「団塊の世代」を図書館に取り込むために多くの催しが行われましたが、大半は企画倒れに終わってしまいました。上記のように「視点」を変えることなく、文学・人文関係に偏向した企画ばかりでは言わずもがなという気もします。

集会行事を語ろう

先ほどの、福井県立図書館の事例ですが、いずれ図書館報のようなものに掲載されたほかは、

  • 日時
  • 講師
  • 参加者数

が、年刊報告書に無味乾燥に掲載されたほかは、忘れられがちでしょう。
また、イベント担当者は、企画・立案から募集までの流れは熱心にやりますが、終わってしまえば参加者数を数えるだけで終えてしまっている印象があります。
思えば、集会行事は図書館法第三条で

六  読書会、研究会、鑑賞会、映写会、資料展示会等を主催し、及びこれらの開催を奨励すること。

と謳われておりました。しかし「貸出至上」という綱領(テーゼ)のなかで、あまり重きのおかれなかった分野(特に交流に関しては)でもあります。
大小問わず、イベントを開催された館員は、感想等をぜひソーシャルメディアに書いて見ていただければ幸いです。誰かがくちばしで突いてできたヒビを、他の誰かがまた突っつきまわす。そうしなければ図書館界あげて「殻を破る」のは難しいことかもしれません。

*1:むろん、そうでない司書も実見したが、“酷評”とされるので、言及しない

*2:“火をみる以上に明らか”の威力増大バージョン

*3:もっとも優れた「単眼」が烏合の衆の「複眼」をはるかに凌駕することもありますが…